17歩目 ページ19
兄はずるい。純粋ってずるい。何でこんなにドキドキするんだ。
口許を押さえながら蒼はぐるぐると考えた。赤くなりながら嬉しいと笑ったAは温かくて優しい聖女のような顔だった。何だあの顔。男子が出来る顔じゃないだろ。
Aと話すようになってから蒼は自分がおかしくなったと思っている。Aを可愛いと思ったり、Aの違う表情をもっと見てみたいと思ったり、クラスでのことが気になったり。今までにない感情だ。何もかも分からないから、モヤモヤする。
しかしAの前でみっともない表情をしない蒼は、考えないようにして時間を過ごした。怪我をしている兄の手を動かさないよう、今のうちに家のことはこっそりやっておく。気付けば15時過ぎ。家のことも一段落ついた蒼はAのところへ行った。
「ねぇ兄さん。映画見ない？智仁さんが借りてきたらしいんだけど」
「うん、いいよ」
智仁が借りてきたのはファンタジーものの映画だ。ヒロインが色々な異世界を旅し、悪者と戦って平和と大切なものを見つけていく。人気のある大作らしい。
午後特有のまったりとした空気の中、ココアとお菓子を出して映画を付けた。兄を右側に座らせておけばお菓子を取る手は左になる。よし、と蒼は心の中で頷いた。理想的な午後の過ごし方だ。
映画も中盤に差し掛かり、今は重要なシーンだ。なるほど。確かにこの映画は面白い。
その時、ふと右肩が重くなった。静かな寝息と、同じシャンプーの香り。寄りかかってきたのはAだった。午後特有のまったりとしたこの空気に眠気が誘われたらしい。仕方ないことだ。
首が傾きずり落ちてくるのを手で受け止め膝に寝かせる。所謂膝枕だ。顔に掛かっている髪の毛をそっと退かせば綺麗な横顔があった。
睫毛長いな。体つきも結構細いし、女の子みたいだ。怪我をしているAの右手を負担が掛からない位置におきながら蒼はボーっと考えた。
「っ……かあ、さ……ん…」
綺麗な横顔が苦しそうに歪む。どうやら母の夢を見ているらしい。蒼はそっとAの髪を撫でた。
「大丈夫だよ、兄さん。俺がいるから」
優しく声を掛ける。届かないと分かっていても苦しむ顔は見たくない。
「そら……」
なのに兄は、名前を呼んでふにゃりと笑うから。また蒼の心臓は痛くなる。でも同時に温かくもなった。
「A……」
何でそうしたのか分からない。だが蒼はそっとAの顔を動かし、綺麗な額に、
―――――――――――――触れるだけのキスをした。
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埋夜冬(プロフ) - 名無しさん» 読んでいただきありがとうございます！ありますよー！蒼くんの方が高いです！そうですねぇ、大体10センチくらい差があると思っていただければ！ (2022年3月19日 7時) (
レス) id: 19b82d3da7 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 身長差とかってあるんですかね (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - お伺いしたいことがあるんですが (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 古紗雪さん» 待っててくださりありがとうございます！更新頑張りますね！もうガン見しててください(笑) (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 龍晴さん» そろそろ続編にいきますよ！そこで完結です！夢主くんと蒼くんはどうなるのか！？麗は成敗出来るのか！？モモの正体は！？乞うご期待ですよ！ (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作成日時：2018年12月28日 1時
