信じない理由 6 ページ7
学園長はビクビク震えている彼女をじっと見た。ウェーブがかかった色素の薄い茶髪が揺れている。髪と同じ色をした大きな目には涙が溜まっている。華奢な体だ。守ってあげたくなるような雰囲気がある。
魔力がないのは元から感じ取っていた。制服はこの世界のどこの学校のものでもない。だからどこの子なのかも分からない。馬車が学生じゃない者を迎えに行くなんて事例は今までになく、学園長も当然困惑している。
「ここは魔法が使えるんだ。すごい······初めて見た」
外見が誘拐犯云々の話をノリで躱しながら、さてこの子をどうしたものかと考えていたところだ。
初めて見た?そんな事はありえない。
もちろん魔法が使えない者もいる。だが街を歩けば魔法を扱っているものはそこかしこにいる。街に出たことがない?見れない状況にいた?或いは······閉じ込められていたのか。
ここいる皆が静かに息を飲んだ。恐らく同じ考えにたどり着いたのだろう。レオナの問いにも見たことないと返す彼女はぷるぷると震えていた。レオナが怖かったらしい。
「やはり闇の鏡が言っていたことは本当だったんですね。ではアレも―――」
魔力がない、というのは入学式が落ち着いてから闇の鏡に彼女を見せて分かっていた。
そしてもう1つ。彼女に帰る場所がない、ということも。
今ここでそれを告げてしまえば、すぐに泣いてしまう彼女の心は確実に壊れてしまうだろう。それはいけない。
「ではこうしましょう。あなたにはしばらくこの学園で暮らしていただきます!そうですねぇ、雑用がか――――いえ、グリム君やその他寮の監督生ということで!」
行く宛がないならば、少なくとも4年は過ごすことの出来るこの学園にいてもらうのが最良だ。外に放り出したら犯罪者たちの格好の餌食になってしまう。一教師としても人としても、それは未然に防がねばなるまい。
彼女はきゅっとグリムの手を握っていた。
「大丈夫です!ご家族に連絡して迎えに来てもらう間ですから。ここは勉強も進んでいますからね、賢くなればご家族も喜んでくれると思いますよ。部屋は、そうですねぇ······使われていない寮があったはずです。多少趣はありますがまぁ、何とかなるでしょう」
我ながら優しいですね!!
1人満足気に頷いていると、彼女からはとんでもない言葉が飛び出した。
「······大人はすぐに裏切るって聞きました。学園長さんは、優しくした代わりに、ボクに何をさせるんですか?」
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埋夜冬(プロフ) - 茜さん» 読んでいただきありがとうございます!続編でやらせていただきますね!お待ちください! (2022年1月30日 11時) (レス) id: 71445b0c29 (このIDを非表示/違反報告)
茜 - 夢主のイラストを見て可愛い!と叫びそうになりました。リクエストでハーツラビュルにお茶会に呼ばれたらというのをお願いします (2022年1月30日 11時) (レス) @page40 id: 6b60f4e764 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ユノンさん» こんにちは!コメントありがとうございます!私自身イラストが描けないので、絵心のある友人に頼んでみました!11日以降にまた覗いてみてください!きっとイラストが載ってますよ! (2022年1月6日 17時) (レス) id: 5c8498129f (このIDを非表示/違反報告)
ユノン - 夢主人公のイラストが見てみたいです (2022年1月6日 12時) (レス) @page3 id: 53f56e15b5 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 星猫さん» 嬉しいです!!ありがとうございます!!続編までいくと思いますので、どうぞよろしくお願いします!!! (2021年12月30日 14時) (レス) id: 5c8498129f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜 冬 | 作成日時:2021年11月21日 23時