特殊スキル［集中］のみで目指す魔王城【オリジナル】

残骸も残らないのが火属性のいいところだな ページ10

｢ハッ！どこ狙ってんだ｣

ファルが煽ると花の魔物は顔を歪ませて攻撃を再開する。だが何度攻撃しても、ファルとエルの間に攻撃が集中してしまうのだ。
間の範囲を指定していなかったので、間全てに攻撃がくる。何ならファルやエルに当たりそうなときがあったのでヒヤヒヤしているのだが、さすが2人、避けている。

｢何故じゃ！何故当たらぬ！！？｣

怒りよりも困惑が勝っているらしい魔物は、顔の表情を次第に焦りへと変化させた。どんなに攻撃しても、間にしか当たらない攻撃。後ろからの不意打ちも方向を変えて間に突撃する始末。

何だ、何が起きている？
手が空いたオリオンたちが辺りを見回す。どこからか、強い魔力を感じたのだ。
これは･･････そう。自己紹介をし合った時に感じた、莫大な魔力量の―――――。

｢これが、あの子の力･･････？｣

Aはただじっと花の魔物を見ている。少しだけ口角が上がっている気がする。

｢ファル！！｣

｢ああ｣

Aの声に反応したファルが動かないまま掌に小さな黒い火を出した。花の魔物を真っ直ぐ見つめて、ゆっくりと歩く。

｢来るな！！来るなァッ！！！｣

焦った花の魔物は蔦や木などを使って攻撃するのに、全てファルとエルの間にランダムに刺さる。当たらない！当たらない！！何故！！！

｢終わりだ｣

歩みを止める。間近にいる花の魔物の顔は恐怖に歪んでいた。ファルの目の前には術式が浮かんでいて、ファルはその術式へ向かい黒い火の玉を飛ばした。

｢いやぁぁぁ！！！！｣

黒い火は術式を通過して力をつけ、花の魔物全体に広がる。飲み込んだ炎はバチバチと音を立てて燃え上がった。

｢結局最後は俺が仕留めてしまったか。まぁ、残骸も残らないのが火属性のいいところだな｣

対象だけを燃え上がらせている炎は未だ燃えている。相手は草木だ。さぞよく燃えるのだろう。

｢さてと｣

ファルがパチンと指を鳴らす。瞬間、先程まで離れた位置にいたAがファルの横にいるではないか。

｢は！？え？｣

Aも予想外でファルを見る。まさか自分が瞬間移動をすると思ってなかった。

｢怪我はないな？変だと感じるところは？･･････済まない。本当は俺が守るはずだったのに、相手が少々厄介だった｣

質問に首を横に振るとぎゅうと抱きしめられた。

｢――――――――――――――｣

｢･･････うん｣

ギリギリ聞こえる小さな声でファルが言った。そこで理解した。
本当は僕を隠したいのだと。

それにしたって、ファルにこんなに執着されるような事をした覚えがないんだよなぁ･･･→←生きたいと願うなら死が迫っていても抗ってみせろよ

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