その子はお前たちの何? ページ28
ピリピリと肌を刺す殺気が強くて腕が震える。クルシュが構えている矢も照準が定められない。目を細めただけでこの威圧感を出せるなんて、やはり格の違いを思い知らされる。
だがAとエルが下がりきるまでは、オリオンに向け遠隔治癒魔法をかけているハルが落ち着くまでは、ラナストがヴィーシャの応急処置を終えるまでは、自分はここから動いてはならないし怖気付いて逃げることもしてはならない。そんなことをしては騎士失格だ。
「その子は何?」
ノヴァーレが首を傾げる。
「答える義理はない」
言葉と同時に放った矢は当たる寸前で掴まれバキリと折られる。得意魔法を使わないただの矢なのだから当たらないのは当然だ。威嚇射撃は意味を為していないようで、ノヴァーレはまたコツンと歩みを進めた。
「聞いてるの。その子はお前たちの何?」
「仲間だ」
はぁ、と深いため息をついたノヴァーレは頭をかいた。
ビリビリと肌を刺す殺気。昏い紅色はクルシュの真っ直ぐな瞳を見て舌打ちをした。
「そういうこと聞いてるんじゃないんだけど」
「ッ、術式展開!」
ノヴァーレが指を鳴らす。何をする気なのかいち早く察したクルシュは初歩的な岩の魔法を使い段差をつくって上に飛ぶ。瞬間、クルシュがいた周辺と岩の段差が飛び散る。ノヴァーレの魔法だ。
「遅い」
空中戦。クルシュが落ちる前に、ノヴァーレはクルシュを殴った。顔面を殴られるのを防いだクルシュだが、腕でガードしてしまった為に片腕は使い物にならない。してはいけない音がした。幸いだったのは、無事なのが利き腕なことだろう。
「クソ・・・!!」
この腕では弓矢は使えない。着地前に弓矢を放り投げ、代わりに腰に差していたレイピアを抜く。
地面に向けて一振りする。風の魔法が自動的に付与されるものなので、緩やかな反発で着地した。やられた片腕は動きそうもない。そのうち感覚が戻ったら痛みを無視して戦おう。
「剣もできるんだね」
「当たり前だ。隊長であるなら部下の武器も管理方法も使い方も全て頭にいれてある」
弓の良さを見出す前、当時の得意武器はレイピアだった。腕が鈍った気はしないが久々に扱う。
「へぇすごい。でも――――――――君じゃ僕に勝てない」
ノヴァーレは火と風の融合魔法を放つ。風魔法を剣にのせ払うが、少しでも気を抜くとノヴァーレが近付き爆発を仕掛けてくる。
全ての技を防ぐので精一杯だ。技の繰り出しが速すぎる。
クルシュの体に傷が増えていった。
致命傷を負わせに行こうか→←では彼で、君の予想が合っているか試してみようか
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埋夜冬(プロフ) - 千々さん» 最後までお読み下さりありがとうございます!!!もう本当にありがとうございます!超絶励みになってました!(語彙力) 主人公くんに万が一飽きると魔王様が攫う気満々ですが、その前にエル様がガードしにきます。玩具を取られたくないからね!!ガードが多いね主人公! (2021年3月13日 11時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 完結おめでとうございます! とても面白かったです! やっぱりファルの主人公に対する執着がいいなあと思いました。そしてファルが主人公に飽きる日は来ないらしいですが、もしそんなことになったら私が主人公を守りにいきます(( 本当にお疲れさまでした! (2021年3月13日 11時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 千々さん» ありがとうございます!!作者は更新時間まばらですが、これからも精一杯頑張らせていただきます!今後もよろしくお願いします! (2020年8月26日 12時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 続編おめでとうございます! とても楽しくお話を読ませていただいています! 楽しいお話の中にちりばめられた謎がとても気になって……! これからも読ませていただきます! 続きを楽しみにしていますね! (2020年8月26日 8時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ふわふわありすさん» ありがとうございます!予定では続編でちゃんと終われるはず!頑張りますのでお楽しみに!コメントありがとうございます! (2020年8月26日 5時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2020年8月25日 23時