なら、君は敵だ ページ24
ファルは手を前に出す。黒と白が混じった炎が、赤い小さな煌めきを包むようにゴオゴオと燃え盛った。しばらくして炎が消える。赤い小さな煌めきもさらに小さくなって尽きた。
はぁはぁ、とファルが肩で息をする。ファルがこんなに荒い息を繰り返すだなんて。それほどあの赤い小さなやつはものすごい威力なのだろうか。そう言えば、ファルがすごい炎を出したのに、消えるのは赤いやつの方が後だった。あのファルの炎より、威力が少し上だということかもしれない。そう思うと寒気がした。
今、自分が焼殺されそうになっていたという事実が突きつけられ体が震える。
｢ファグゲイル｣
ゾクリ。
動いたら殺される。そのくらい低く、恐怖を感じる声がした。
ノヴァーレの赤い瞳が昏さを増した。恐い。ファルの体も震えているのが分かった。目を向けると、エル達も固まっている。
これが、魔王。
｢君ほどの魔族が何故人間につくのか理解できない。説明してくれるよね？｣
震える唇が、声を発した。
｢紋の、通りです｣
ノヴァーレの何の感情もない瞳がファルを射抜いた。ひゅ、とファルの喉から息が漏れる。
｢どういうことか分からない。その紋は何を意味しているのかな｣
聞いたのはエルだ。飛ばされたオリオンの傍から離れない。というより、恐怖でこちらに近付けないようだ。オリオンはハルが治療魔法を掛けている。
｢ふむ･･････。いいだろう、教えてあげるよ。この紋はね、契約だ。一生使役できる鎖だよ。ファグゲイルは自分の権限を全て、この人間に託したんだ｣
生きるのも死ぬのも命令すれば体が勝手に動く。そういう契約なのだと魔王は言った。
｢解除条件が権限を持つ主を殺すこと。だから人間ごときに囚われた憐れな龍を、僕が助けてあげようと思ったのに｣
怒りだけが感情を支配している顔だ。魔王はその顔をファルへ向けた。
｢何故その人間を守った？紋の通りってことは君は自ら選んだと？｣
｢･･････はい｣
A、頼むから下がっていてくれ。
小さな声でファルが言う。いつもなら離れるなと言うファルが下がれと言うだなんて、つまりは勝てないと言っているのと変わらない。
｢なら、君は敵だ｣
ノヴァーレが言うと同時にファルの体が飛んだ。
｢ファル！！｣
空中で態勢を立て直して着地したファルはすぐに黒い炎を魔王に向かって放つ。正面から突っ込んだ魔王に焼けた後などない。
激しい戦いに火花が散った。
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埋夜冬(プロフ) - 千々さん» 最後までお読み下さりありがとうございます！！！もう本当にありがとうございます！超絶励みになってました！(語彙力) 主人公くんに万が一飽きると魔王様が攫う気満々ですが、その前にエル様がガードしにきます。玩具を取られたくないからね！！ガードが多いね主人公！ (2021年3月13日 11時) (
レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 完結おめでとうございます！ とても面白かったです！ やっぱりファルの主人公に対する執着がいいなあと思いました。そしてファルが主人公に飽きる日は来ないらしいですが、もしそんなことになったら私が主人公を守りにいきます(( 本当にお疲れさまでした！ (2021年3月13日 11時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 千々さん» ありがとうございます！！作者は更新時間まばらですが、これからも精一杯頑張らせていただきます！今後もよろしくお願いします！ (2020年8月26日 12時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 続編おめでとうございます！ とても楽しくお話を読ませていただいています！ 楽しいお話の中にちりばめられた謎がとても気になって……！ これからも読ませていただきます！ 続きを楽しみにしていますね！ (2020年8月26日 8時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ふわふわありすさん» ありがとうございます！予定では続編でちゃんと終われるはず！頑張りますのでお楽しみに！コメントありがとうございます！ (2020年8月26日 5時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作成日時：2020年8月25日 23時
