作戦が物騒で僕ブルブルしちゃう ページ21
「そんなッ、いっ・・・・・・!!」
起き上がろうとしたラナストだが、傷口を押さえてまた倒れた。
「ラナストさん動かないでください!どれだけ傷が深いと思ってるんですか!」
ハルが珍しく怒るのでラナストは大人しく倒れたままになることにした。
傷口が痛いのは確かだ。ラナストだって、王国騎士団として場数は踏んできた。痛みからどれだけ危険かも分かっているつもりだ。自分が痛いと思っていて動けない、ということはかなり限界であると。信じたくないけど。
「・・・・・・王子、俺を置いて、魔王城へ向かってください」
ラナストは腕で目を覆って言った。表情は見えないが、言いたいことは分かる。『皆の足手まといになるからオレを捨てて進め』。
「ラナスト、それは出来ない。なぜなら私は王子だからだ。置いていかないよ」
「でも俺は・・・・・・!」
「ラナスト」
落ち着いたエルの声に、言葉を紡ごうとしていたラナストは黙る。目を覆っていた腕を下ろしてエルを見ると、笑みを浮かべていた。
忠誠を心から誓う部下を、存在意義のためにしっかり使い切る『王の顔』をしていた。
「魔力はまだあるね?」
「はい」
魔力自体はある。ラナストの雷魔法は少量の魔力で威力の強いものだ。加速と剣技の数回しか使っていないので、魔力量が元々多いラナストはまだ魔法を使うことが出来る。
「ハル、とりあえず歩けるまで回復してあげてほしい。ラナストは一緒に魔王城に行こう。雷魔法で援護、頼めるね?」
ハルは頷いて治癒魔法を再会し、ラナストは目に涙を溜めた。
「はい・・・!この命に変えても、エル王子をお守りし援護いたします・・・ッ!!」
ラナストは再度腕で顔を覆う。隙間から涙が零れているのを見てエルは満足気に口角を上げた。
使えるものは使い切らないとね。例えそれが人間だろうと。
「皆もまだ魔力を残しているよね?」
皆も頷く。
ラナストの回復を待つ間に、いよいよ向かう魔王戦の作戦会議を始めた。長くて難しい言葉が飛び交う作戦会議だったけど、要するに『動きを封じて視覚と聴覚を奪っておこう』作戦だということは分かった。作戦が物騒で僕ブルブルしちゃう。
ふとファルが難しい顔をしていることに気付いた。
「ファル・・・・・・?」
「俺は、Aに嫌わたくない。だがこのままだと――――――」
瞬間、全員の足元に大きな魔法陣が浮かび上がった。
「しまっ――――――!!!」
言葉を発する前に、平原から人が消えた。
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埋夜冬(プロフ) - 千々さん» 最後までお読み下さりありがとうございます!!!もう本当にありがとうございます!超絶励みになってました!(語彙力) 主人公くんに万が一飽きると魔王様が攫う気満々ですが、その前にエル様がガードしにきます。玩具を取られたくないからね!!ガードが多いね主人公! (2021年3月13日 11時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 完結おめでとうございます! とても面白かったです! やっぱりファルの主人公に対する執着がいいなあと思いました。そしてファルが主人公に飽きる日は来ないらしいですが、もしそんなことになったら私が主人公を守りにいきます(( 本当にお疲れさまでした! (2021年3月13日 11時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 千々さん» ありがとうございます!!作者は更新時間まばらですが、これからも精一杯頑張らせていただきます!今後もよろしくお願いします! (2020年8月26日 12時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 続編おめでとうございます! とても楽しくお話を読ませていただいています! 楽しいお話の中にちりばめられた謎がとても気になって……! これからも読ませていただきます! 続きを楽しみにしていますね! (2020年8月26日 8時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ふわふわありすさん» ありがとうございます!予定では続編でちゃんと終われるはず!頑張りますのでお楽しみに!コメントありがとうございます! (2020年8月26日 5時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2020年8月25日 23時