6冊目 ページ8
よく分からないが気に入られたようだ。どの辺りがその要素だったかは疑問だがまぁ良いだろう。
「さてと。俺が認めたことだし、やることについて話そうか。立ってんのも疲れたし」
応接間のソファーに向かい合わせに座ると湊は足を組んだ。足を組むと気だるげ度より色気の方が増した。
足の組み方１つで色気を倍増させるなんて大人気作家は恐ろしや。
「専属にした理由は、まぁ、俺が倒れるのを防ぐため。で、」
「ちょちょ、待ってください！！」
今この天才作家は何と言ったか。“倒れるのを防ぐため”！？何言ってるんだ！！作家にとって世界を生み出すための大事な体だろうに。
「倒れるってなんですか！？」
「そのままの意味だけど。俺家事できないから」
家事できないのに一人暮らし始めたの！？とAは驚いた。もしや、あのときの“料理できる？”とかいう質問は、やってもらうため？
「だから一緒に住んでほしいんだけど」
「はいっ！？」
いやいやいや！何言ってんのこの天才作家！！
湊は表情も声のトーンも変えずに言った。愛川からこの手の話は聞いているはずなのだが、愛川はAに何も言っていない。
最近は新人の相手で忙しいのだろう。わかっている。
「あのっ、一緒に住むのはさすがに……」
新居も契約したばかりだし、昨日会ったばかりの人といきなり同居だなんて。
慌てていると湊ははぁ、と深くため息を吐いた。
「あんたさ、今の貯金は？家賃が浮くだけでも有り難いと思うんだけど」
うっ！その通りだ。両親から仕送りはしていってあげると言われているが何せ田舎だ。こちらに送るだけでも高めの料金が発生する。
「それと、俺は執筆に夢中になると何日でもご飯食べなくなるから倒れるよ」
いいの？と湊は聞く。いいわけないだろう。だがこれで「じゃあ…」と言ってしまうと、あのとっても大変だった住所の登録やら何やらし直さなくてはならない。
「駄目なの？専属編集者さん？」
コテン、と首を傾げる湊の周りがキラキラして見える。何だろう、この拒否してはいけない感は。
湊は意外と頑固だ。普段無気力な分、やるときは力を発揮する。これを断られても次の手は考えてある。
「わ、わかりました！ですが、愛川編集長に聞いてからですからね！」
「……わかった」
作戦成功。
元々編集者との同居を発案したのは愛川だ。断る訳がない。つまりAに逃げ道はないのだ、初めから。
その日。出版社に戻ったAは愛川にこの話をし、１つ返事でOKされてしまったのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 670人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 有難うございます！ (2019年8月17日 12時) (
レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 通りすがりの葉っぱさん» ない……ですね。設定してませんでした。私は妄想するとき夢主くんを「涼(りょう)」と呼んでます！自由に付けてくださって大丈夫ですよ！！ (2019年8月17日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 主人公の名前って設定無しだと何になりますかね？ (2019年8月16日 14時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - アリアさん» そ、そんな……！(照)ありがとうございます！ライバルというか引っ掻き回すというかーって感じなんですけど、その分キュンキュン度をあげていきたいと思います！お楽しみに！！☆ (2019年8月10日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
アリア - えちょっと続編すっごい面白そう...いや、この作者を疑うのは止めよう。絶対面白いよ!凜音の小説も待ってます☆ (2019年8月9日 18時) (レス) id: 39676cde20 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：埋夜冬
| 作成日時：2019年4月23日 23時
