13冊目 ページ15
「出会ってから2週間後ぐらいのシーンなんだけど、駄目?というか、やられてどう思った?」
「び、びっくりしました……!!」
今だって心臓がドキドキしているのだ。帰っていきなり股ドンされて驚かない人がいるなら見てみたい。
「他は?」
驚いたのは分かってる。それ以外のことがほしいのだ。湊としてはやられた人の意見が知りたい。
「……言うべきですか…?」
「だっていい作品になるよう手伝ってくれるんでしょ?」
うっ、それを言われると返せない。
言ったのはAなのだ。腹を括って言うしかない。
「いや、あの……」
恥ずかしくて顔が赤くなる。Aは顔を逸らした。
「へ、変な声出ちゃったな、とか……」
いくら圧迫感が強かったとはいえ、男性にあるまじき声だった。
ああ思い出すとますます恥ずかしい!!
「……だ」
「え?」
湊は小さい声で何かを囁いた。目を向けると湊の目が輝いていた。普段あんなに気だるげな目の湊が。
「それだ!今の言葉、今回のシーンに使っていい!?」
「え、あ、はい!どうぞ!」
この人は、小説のことになるとこんなにキラキラした瞳になるんだ。純粋で、透き通った紫色が喜びに溢れている。とても、綺麗だ。
「ちょっと描いてくる!」
いつもの気だるげはどこかへ消えて湊は書斎へ向かう。
「あ」
途中振り返った湊はAに笑いかけた。
眩しいくらいに煌めいていて、美しいとか綺麗とか、そんな言葉で表せない。綺麗な夕焼けを見たときのような、水平線と青空を見たときのような、何とも言えない感情が巡る。
「ありがと、専属編集者さん。Aのおかげだよ」
世界が、止まったような気がした。
息ができないくらい心臓がうるさい。先程のドキドキとはまた違う、もっと甘いような、キュッとなる気持ちだ。
編集者として認められた?プロの中でも大人気作家の湊に?それに、ありがとうって。
「頑張ってくださいね。後でコーヒー持ってきます」
かろうじてそう答えたAは湊が書斎に入った音を聞いてからAは床に突っ伏した。
反則だ。あんなにすてきな笑顔を見せるなんて聞いてない。何あれヤバい!!!と心の中の頂上で叫んだ。
もっとああいう顔をしていればいいのにとも思うが、僕が知ってる分なのでそのままでいてほしいとも思う。
何なんだろう、このキュッてなる感情は。
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通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 有難うございます! (2019年8月17日 12時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 通りすがりの葉っぱさん» ない……ですね。設定してませんでした。私は妄想するとき夢主くんを「涼(りょう)」と呼んでます!自由に付けてくださって大丈夫ですよ!! (2019年8月17日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 主人公の名前って設定無しだと何になりますかね? (2019年8月16日 14時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - アリアさん» そ、そんな……!(照)ありがとうございます!ライバルというか引っ掻き回すというかーって感じなんですけど、その分キュンキュン度をあげていきたいと思います!お楽しみに!!☆ (2019年8月10日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
アリア - えちょっと続編すっごい面白そう...いや、この作者を疑うのは止めよう。絶対面白いよ!凜音の小説も待ってます☆ (2019年8月9日 18時) (レス) id: 39676cde20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年4月23日 23時