12冊目(微ピンクかも) ページ14
湊の編集者になってから1週間が経った。おかげでいろいろと分かったことがある。
例えば集中すると寝食を忘れること。愛川から聞いていたが、ネタが降ってきたら寝食を忘れて没頭していた。この人絶対倒れてるよ!と心配になったのは言うまでもない。
例えば意外と甘党なこと。小説が一段落すると夕食前だろうが何だろうがお菓子を食べる。本人曰く「頑張ったから相応のごほうびを自分に与えてる」と言われた。ちなみに取り上げるとめちゃくちゃ拗ねる。子供並みに拗ねる。
そんなAでもわからないことはある。例えばそう。今のように、
「あの……九条先生…?」
湊に股ドンされている理由とか。
今日は昼から出版社に出ていた。湊に頼まれた資料が届いたからだ。しかし行くことは湊に言ってあるし、食事も用意しておいた。何か問題があったのだろうか。
「お前……いつ、誰が、俺の側から離れていいって言ったよ」
ぐっと湊の足が上がってくる。その先にあるのはもちろんAの股間だ。
「え、ちょ、九条先生!?」
「お前は、俺のモンだ。勝手にどこか行くことは許さねぇ」
このまま上がってくるとAの足が地面から離れてしまう。
「んんっ、ちょ、待って……!」
やばいやばいやばい!!
湊は足を止める気はないらしい。もうつま先立ちになっていたAの足が離れた。
「ぁ、ん、くじょ、せんせ……!」
圧迫感がすごい。自分の体重が乗っているから余計に。
「分かったか、下僕が」
その言葉を最後に湊は足を下ろす。くたん、とAは床に座り込んだ。何が起きたのか、頭の整理が追い付いていない。
「……ねぇ」
湊は座り込んでいるAと同じ位置になるようしゃがんだ。声音はもう怒っていない。
「今の、この前プロット渡した小説のシーンなんだけど、どう思った?」
この前プロットを渡された小説。御曹司の攻めに翻弄される貧乏人の受けの話だ。
つまり湊は攻めキャラの役をやったということだ。
はぁぁぁ〜……。とAは心の中で盛大なため息を吐いた。せめて何か一言でも言ってくれれば心の準備が出来たのに。
「あの!せめて一言でも……!」
こてん、と首をかしげる湊にAは負けた。何でこの人無駄に顔がいいんだ。
天才作家はやることが違う。この先またこういうお手伝いがあったらどうしよう、とAは頭を悩ませた。
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通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 有難うございます! (2019年8月17日 12時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 通りすがりの葉っぱさん» ない……ですね。設定してませんでした。私は妄想するとき夢主くんを「涼(りょう)」と呼んでます!自由に付けてくださって大丈夫ですよ!! (2019年8月17日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 主人公の名前って設定無しだと何になりますかね? (2019年8月16日 14時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - アリアさん» そ、そんな……!(照)ありがとうございます!ライバルというか引っ掻き回すというかーって感じなんですけど、その分キュンキュン度をあげていきたいと思います!お楽しみに!!☆ (2019年8月10日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
アリア - えちょっと続編すっごい面白そう...いや、この作者を疑うのは止めよう。絶対面白いよ!凜音の小説も待ってます☆ (2019年8月9日 18時) (レス) id: 39676cde20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年4月23日 23時