50歩目 ページ10
連れてこられたのは校舎裏。それも物置がある薄暗いところだ。誰も来ないどころか、Aは来たことがない場所だった。麗は何でこんな学校の裏ルートみたいな場所ばかり知っているのか。今みたいにいじめるためか。怖い。
「あの……何――――――」
「何なのよ貴方はっ!!!」
いきなり叫ぶように声を荒げられビクリと体を震わせた。麗の顔は怒りで染まっていた。
「貴方は私のクラスのカースト底辺者でしょ!何で私に逆らうのよ!何で貴方と蒼があんなに仲良いの!?蒼には貴方なんかより私の方がお似合いなのよ!前々から貴方のことが気に入らなかった!」
ズカズカとAに寄った麗はAの肩を思いっきり押した。バランスを崩したAは物置に背中を強く打ち付け、ずるずると座り込む。
「痛っ……!」
「ふん。転ばせた時はそんな反応しなかったじゃない。あの態度は誰から教わったのかしら?嫌だわ、令嬢に対する態度もなってないなんて」
穢らわしいものを見るようにAを蔑んだ麗は、ぐいっとAのネクタイを引っ張った。
「いい?貴方みたいな底辺な人が蒼に近付かないで。汚いわ。根暗は根暗らしくこそこそ本でも読んで、世間の邪魔にならないように生きてちょうだい」
息が詰まって苦しい。ネクタイを引っ張っていた手を麗は乱暴に離し腕を組む。ゲホゲホと咳き込むAを見下した。
「蒼に、近付かないでって……桐島さん、蒼のこと、そんなに想ってないでしょ」
二人は恋人同士だ。でも見ていて、本当はそこまでお互い想ってないのではと感じるときは何度もあった。モモに言われた質問だ。この際本当に想っているのか聞くチャンスでもある。
「はぁ?当然じゃない。私は蒼がほしいんじゃないの。ほしいのは肩書きよ。さっきも言ったわよね?蒼には私がお似合いなの。何でか分かる?私はこの学校のカーストトップ。しかも桐島財閥の令嬢よ。そんな私には、顔も良くて頭も良くて性格も優しくて王子様と呼ばれている彼が相手に相応しいじゃない。トップにはトップがお似合いでしょう?」
つまり蒼は、こんな奴の、自分のことしか頭にないような奴の踏み台に使われているのだ。
許せない。蒼を、そんなふうに扱うなんて。
「……自分のことしか考えてない奴と、周りのことばかり考えてる優しい蒼が、お似合いなわけないっ!!蒼の肩書きしかみてないくせに、彼女面するのもいい加減にしろよっ!!」
立ちあがり初めて麗と真正面からぶつかった。
それほどAには、麗の行為が許せなかった。
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埋夜冬(プロフ) - ウェーイさん» 喜んでいただけているご様子ですね!嬉しいです! (2021年7月10日 22時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ウェーイ - (*^▽^*) (2021年7月10日 22時) (レス) id: 600bb56534 (このIDを非表示/違反報告)
トマトジュース - アギャァァァァァァ!!無理尊い、辛い、泣けるンゴ、吐血するンゴ、つかしたんご (2019年9月19日 22時) (レス) id: b4078055ec (このIDを非表示/違反報告)
カナ - (^∇^) (2019年7月13日 14時) (レス) id: 99b9fc8fa9 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - カナさん» ありがとうございます!もうすぐ終わりますのでお楽しみに☆ (2019年7月12日 7時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作者ホームページ:http://uratuku/sounewawawa1
作成日時:2019年3月5日 23時