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あの一件以来、麗はある考えを巡らすようになった。
蒼が私を見ないのは、あの根暗がこちらを見ているからだ。つまり、あの程度ではなくもっと根暗を牽制しておかなければならない。そしてあの根暗が怖がるものは麗自身だ。
私をあの根暗の恐怖対象にすればこちらを見ないわ。私ったら頭いい!と麗は自分を誉め、早速実行することに決めた。
「ねえ」
恐がらせるには大きいを出す。あと口調。捲し立てるように言えば根暗は怯える。最後に集団。囲むことでより断れない状況を作る。私は取り巻きを数人連れた。
「は、はい……!?」
「今日の放課後、私達掃除当番なの。でも執事がお迎えにくるから遅くできないよ。やっておいてくれるわよね?」
威圧的に。冷ややかない眼差し。麗は長年邪魔な存在を消してた者としてあともう1つ分かっている。
「ねぇ?早く『はい』と言ってくださらない?私達も暇じゃないの」
「あ………はい」
ほらね、思った通り。言え、と言われればその通りになるのだ。彼は私達には逆らえない。
麗は口角をあげた。
麗は取り巻き達と笑ってその場を去る。入れ替わりにモモがAのいる席まで来た。
「うっわ〜麗ちゃん怖〜。目付けられちゃったね〜!あ、私も今日は用事あるから掃除当番手伝えないの。ごめんね〜」
「……いいよ、別に」
最近のモモはAがこんな状態だと言うのに楽しんでいるようだ。さすがにAにも警戒されている。
かくしてAは放課後一人で残り掃除をすることになった。
やることは単純だ。廊下と教室を掃いて埃を集めて、ゴミを捨てて、机を水拭きする。だが単純でも人手がいる。これを全て一人でやるのは些か骨がおれるものだ。
「よいしょ……!」
廊下と教室を掃き終わり、次はゴミを捨てに行く。これでやっと終わりか……とボーっと考える。何だかどっと疲れた。
「はぁ……」
ゴミ箱を置いてため息を吐いた。なかなか重い。4階から1階まで下ろすのは手も足も力が必要だ。
「A先輩?」
頭上から降ってきたのは優しい声。顔をあげると蒼がこちらを見ていた。
「そ、……東雲くん」
「……手伝いますよ」
何かを察した蒼はゴミ箱を持って下へ降りて行った。
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埋夜冬(プロフ) - ウェーイさん» 喜んでいただけているご様子ですね!嬉しいです! (2021年7月10日 22時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ウェーイ - (*^▽^*) (2021年7月10日 22時) (レス) id: 600bb56534 (このIDを非表示/違反報告)
トマトジュース - アギャァァァァァァ!!無理尊い、辛い、泣けるンゴ、吐血するンゴ、つかしたんご (2019年9月19日 22時) (レス) id: b4078055ec (このIDを非表示/違反報告)
カナ - (^∇^) (2019年7月13日 14時) (レス) id: 99b9fc8fa9 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - カナさん» ありがとうございます!もうすぐ終わりますのでお楽しみに☆ (2019年7月12日 7時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作者ホームページ:http://uratuku/sounewawawa1
作成日時:2019年3月5日 23時