43歩目 ページ3
一瞬何が起きているのか分からなかった。まさかAの方から抱き締めてくるだなんて。
「にい、さん……」
「言ったから。いつでもしてあげるって」
仮に自分が誰にも言えない何かで悩んでいたら放っておいてほしい反面、ただ大丈夫だと隣に寄り添ってくれる存在がほしいと思う。今の蒼にはそういう存在が必要だ。
蒼はそっとAを抱き返した。首もとに顔を埋める。
「……桐島麗が兄さんに怒鳴ったとき、嫌われたと思った。俺にとっても兄さんは大切な人だから、嫌われたくなくて……。今一緒にいたら泣きそうでさ。兄さんが部屋に籠った気持ちがやっと分かった…かな」
乾いた笑いが漏れた。そのまま泣き声をあげないように唇を噛み締める。涙が零れてAの服を濡らした。
「嫌われて、ないんだね……。よかった」
蒼は心の底から安堵した。Aが蒼を嫌うはずがないのだ。好きなのだから。こんなにも想っているのだから。
体を離した蒼は、Aのサラサラな黒髪を撫でる。耳に掛けて、宝石の瞳を見つめ返した。
「ありがとう、兄さん。いつも、助けられてばかりだね」
泣きながら笑った蒼はAの額に唇を近づけた。チュッとリップ音を立てて白い額にキスをした。
「ちょっ………！」
驚いた顔と共にキスされた額をおさえると、蒼はやっと輝く笑顔を見せてくれた。これでいい。何のことを隠しているのか知りたくても、どんなにモヤモヤしても、今のこの蒼を守るためならAは何だってする気だ。
「ふふっ、2回目だ」
「2回目！？」
今日は驚くことだらけだ。一体一回目はいつだったのだろう。慌ててそれを聞くと1回目は寝ていたときだという。膝枕をされたときだ。覚えてるわけがない。
「し、知らなかった……」
赤くなる頬を隠しつつ目を逸らすAを、蒼は微笑みながら愛しそうに見つめた。
「ああ、夕食が冷めちゃうね。折角兄さんが作ってくれたのに。食べてもいい？」
「もちろん！」
良かった。少しでも蒼に元気が戻ってくれて。夕食の準備をしながらAは微笑んだ。
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埋夜冬(プロフ) - ｳｪｰｲさん» 喜んでいただけているご様子ですね！嬉しいです！ (2021年7月10日 22時) (
レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ｳｪｰｲ - (*＾▽＾*) (2021年7月10日 22時) (レス) id: 600bb56534 (このIDを非表示/違反報告)
トマトジュース - アギャァァァァァァ！！無理尊い、辛い、泣けるンゴ、吐血するンゴ、つかしたんご (2019年9月19日 22時) (レス) id: b4078055ec (このIDを非表示/違反報告)
カナ - （＾∇＾） (2019年7月13日 14時) (レス) id: 99b9fc8fa9 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - カナさん» ありがとうございます！もうすぐ終わりますのでお楽しみに☆ (2019年7月12日 7時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作者ホームページ：http://uratuku/sounewawawa1
作成日時：2019年3月5日 23時
