53歩目 ページ13
よし、と小さく呟いた蒼はAの方を向く。真剣な顔であったのでAも姿勢を正した。
「改めて言うけど――――――俺はAが好き。それも、恋愛的な意味で」
蒼の瞳がAを射抜く。これほど真剣な瞳なら罰ゲームなんかではないこともさすがに分かる。Aはぶわわと顔を赤くした。
「あ、え……！？」
やっと出た言葉がこれだった。
「ごめん。気持ち悪いってのも分かってるよ。何よりAは兄さんなんだから。でも、麗と対峙してるとこを見たらもう止められなかった。大切な人が……好きな人が暴力振るわれてたから、どうしても守りたくて……」
好きな人とか、守りたかったとか、その言葉ひとつでAの心が跳ねる。だがAにはどうして自分なのか分からない。
「そ、その……どうして、僕、だったのかな」
たどたどしい言葉で質問すると蒼はふっと優しい顔を見せた。
「優しいからだよ」
驚きで渡された保冷剤を頬から離していたAの手に蒼の手が重なる。そのまま頬に保冷剤が当たる。熱が溜まっている頬に保冷剤が気持ちいい。
「俺の過去を受け止めて、俺のよりどころになってくれて。麗にいじめられてても迷惑かけないように黙ってたでしょ？そんなAも、ちょっと触れただけでも赤くなる純情なところも、笑顔も、泣き顔も、立ち向かう強い心も、全部愛しいんだ。どんなときでもAを目で追うようになったし、何してるのかいつも気になった。天宮先輩と話してるときも結構嫉妬してた。それくらい、Aが好き」
重なっている手に力が込められる。震えているのはどっちなんだろう。多分どちらもだ。
金の瞳に映る蒼が次第に歪む。Aの瞳が潤んできているから。それはすぐに頬に零れた。
「に、兄さん大丈夫！？……やっぱり気持ち悪いよね。ごめん」
Aは強く首を振った。気持ち悪いというのならAも同類だ。
「違うよ！……嬉しいんだ」
「嬉しい……？」
それは、つまり。
蒼の心臓が今までにないほど動いている。夢かもしれない。それでも、希望が頭から離れない。
「僕も、蒼が好きなんだッ！！その……キス、された日から。ううん。それより前から」
蒼の手が驚きで緩む。頬の痛みはとっくに消えた。Aは両手で涙を拭く。
「気持ち悪いのは、僕も一緒なの！こんな感情、抱いちゃ駄目なのに……！」
お互い、この恋は叶うなんて思ってなかった。だからその分。
「A」
蒼は泣きながら告白したAを強く抱きしめた。
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埋夜冬(プロフ) - ｳｪｰｲさん» 喜んでいただけているご様子ですね！嬉しいです！ (2021年7月10日 22時) (
レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ｳｪｰｲ - (*＾▽＾*) (2021年7月10日 22時) (レス) id: 600bb56534 (このIDを非表示/違反報告)
トマトジュース - アギャァァァァァァ！！無理尊い、辛い、泣けるンゴ、吐血するンゴ、つかしたんご (2019年9月19日 22時) (レス) id: b4078055ec (このIDを非表示/違反報告)
カナ - （＾∇＾） (2019年7月13日 14時) (レス) id: 99b9fc8fa9 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - カナさん» ありがとうございます！もうすぐ終わりますのでお楽しみに☆ (2019年7月12日 7時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作者ホームページ：http://uratuku/sounewawawa1
作成日時：2019年3月5日 23時
