62歩目 ページ22
今日、Aはやらなければいけないことがある。学校について向かうは、モモのところだ。
「あ〜!Aおはよう〜」
今日こそ、流されず、モモの口からモモの秘密を言ってもらうのだ。蒼からいろいろ聞いたが、明らかにモモは予測していたような口振りが多い。それを暴くのは、今後のためでもあるだろう。
「話があるんだけど」
そう言った瞬間、モモの瞳がすぅっと冷えた気がした。でもそれはすぐに、いつものお茶らけた笑顔に変わる。
「いいよ。朝礼まで時間あるから空き教室行こうか」
クラスを出て右に2つ先にあるのが空き教室だ。実はモモが桐島麗にAの秘密をバラした教室でもある。あの時のように、モモはその空き教室の机に座った。
「で、話って?王子様から全部聞いたはずだけど」
「うん、聞いたよ。だから聞きたいんだ。……モモは、何者なの?」
パチパチと瞬きしたモモは、何かをしばらく考えているようだった。それから、まあいっか、とため息を吐く。
「私の仕事は終わったしね。いいよ。話してあげる、私の正体」
今度はAが驚く番だった。いつものようにはぐらかされることを覚悟していたのだが、その心配はないらしい―――
「私はね、転生者なの」
―――なんて思っていた自分が馬鹿だったようだ。
「こことは違う、『本当の世界』の住人。ここはゲームの世界でね〜!私は『本当の世界』でこのゲームをプレイしていた元プレイヤーでさ〜」
「ちょ、何言ってるの?」
一瞬、モモならあり得るかも……なんて考えた自分も馬鹿らしい。
にこにこと“秘密”を語るモモに信憑性なんて微塵も感じなかった。転生者であるなら先を読んだので助けたりするものではないのだろうか。モモからは変な質問を言わされただけだったような気がする。
「嘘つくにしてももっとマシなものあったでしょ?」
「嘘じゃないよ〜?」
ダメだ。そもそも、蒼が暴けなかったモモの秘密をこんな目立たない底辺な奴が暴けるはずなかった。
教える気なんて更々ないのだろう。これ以上詮索したところで収穫は得られない。
「はぁ。もういいよ。助けてもらったのも事実だし」
深いため息を吐くとモモは「も〜本当なのに〜」と頬を膨らませた。もう騙されないぞ。誰が信じるか。
「私、転生したきたんだよ」
モモは信じないことをわかっていて、もう一度Aに言った。
ああやはり。この世界は楽しくて仕方ない。
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埋夜冬(プロフ) - ウェーイさん» 喜んでいただけているご様子ですね!嬉しいです! (2021年7月10日 22時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ウェーイ - (*^▽^*) (2021年7月10日 22時) (レス) id: 600bb56534 (このIDを非表示/違反報告)
トマトジュース - アギャァァァァァァ!!無理尊い、辛い、泣けるンゴ、吐血するンゴ、つかしたんご (2019年9月19日 22時) (レス) id: b4078055ec (このIDを非表示/違反報告)
カナ - (^∇^) (2019年7月13日 14時) (レス) id: 99b9fc8fa9 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - カナさん» ありがとうございます!もうすぐ終わりますのでお楽しみに☆ (2019年7月12日 7時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作者ホームページ:http://uratuku/sounewawawa1
作成日時:2019年3月5日 23時