兎32匹 ページ35
学校に着いた彩兎は、教師陣が少しザワザワしていることに気付いた。そして、理由はすぐに分かる。
「高田先生!」
彩兎を呼び止めたのは教頭だ。彩兎とAが出会うまでAを気にかけていた人だ。きっとAはそんなこと気付いていないだろうが。
「天崎くんが来ていないようなのですが、何か聞いてませんかね?」
ああ、やはり、教師陣がざわついていた理由はこれか。Aはここのとこ、真面目に登校し授業を受けていたのだ。その変わりように脱・不良としての淡い期待を抱いていた教師達は少なくない。教頭もその一人だ。
「さあ?聞いていませんけど……」
軟禁している状態がバレてしまっては意味がない。こんなとこでバレてしまっては困る。ボロ出さないように、彩兎はありとあらゆる計算を頭のなかでしてきた。
「ほらな、所詮こうなるんだ。ああいう奴は」
だから、あの体育教師のような批判があることもシミュレーションしてきた。ここで怒るとバレる可能性が高くなる。なので怒りはぐっと飲み込んだ。
今すぐ帰ってAに「おかえり」と言われたい。だが今日は食材やAの服を買いに行かないといけないので、少し遅くなってしまう。早退したい。
なんてことを考えながら保健室で1日を過ごす。放課後まで頑張った彩兎は帰る支度をしている最中、メールが届いていることに気が付いた。
《玉ねぎと卵が切れたけん、買ってきてほしいばい。夕飯は親子丼とよ。はよ帰ってきぃや》
親子丼の写真とともに送られてきたメールに彩兎は愛しそうな微笑みを向ける。もしここに女生徒がいたならば、その微笑みで気絶していただろう。
今終わったのでもうすぐ帰ります。親子丼楽しみです、と送り返して彩兎は誰よりも早く帰った。仕事なんて家でも出来るのだ。一先ず服と食材を買って帰ることを優先した。
彩兎はショッピングモールに寄り、服を選ぶ。Aはこれが似合いそうだ、いやこれも……と考えていたらすごい量になってしまった。まぁすべて買うのだが。
そのあと下の階で玉ねぎと卵、その他諸々を買い、急いで車に乗る。
今から帰りますね、とメールを打つとすぐに、親子丼温めとくと返ってきた。Aのやっていることは妻のようで愛らしい。
早く、私がいないと駄目なくらい堕ちてくれませんかね?
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埋夜冬(プロフ) - 。#vllさん» そうなんですか!?これの発案者は作者のお友達なんですけど、その子がどうしても兎を名前に入れたいって言ってました。ヤンデレ好きなので関係しているかもしれないですね!最後までお読みくださりありがとうございました! (2019年10月25日 23時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
。#vll - 兎系の人はやんでれと聞いたことがあります、彩兎くんの名前と関係してそー。と勝手に考えていました。とても面白い作品でした。♪ヽ(´▽`)/ (2019年10月25日 12時) (レス) id: 01ebef5845 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 紫園さん» どうもありがとうございます!二人とも尊く書けたのからよかったです!方言は私も書いてて楽しかったです!この作品を好きになっていただきありがとうございました! (2019年5月1日 18時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
紫園(プロフ) - 最後までお疲れ様でした!本当に尊い2人です(´;ω;`)方言とかも最高でした! (2019年4月28日 16時) (レス) id: a3fbe17e50 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 李守文さん» 嬉しい限りですありがとうございます!!!私も博多弁書いてて楽しかったです!そして同じように日常で使いました(笑) 今後も作品を出していきますのでどうぞよろしくお願いします!この作品を好きにいただいてありがとうございました♪ (2019年4月27日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年1月26日 16時