兎30匹 ページ33
ゆっくりと彩兎は目を覚ました。
まだ学校に行くまでかなり時間があるはずだ。
とりあえず朝食を、と考え目を開けた。
「おはよう」
目を開けた瞬間目に入ったのは、昨日自分を抱いた恋人だ。微笑んでいるAは前より一段と色気が増してかっこいい。
「お、おはようございます…。早いですね」
「そうでもなかよ」
昨日のことが思い出され恥ずかしくなった彩兎は、自分の顔をほんの少し布団で覆った。
そんな彩兎の髪を、Aはそっと撫でた。
「な、一緒に暮らすことになっていいこと、1つ目を見つけたばい」
「いいこと……ですか?」
頷いたAは優しげに細めた目で彩兎を見つめた。
「起きてすぐ、あんたの綺麗な寝顔が見れることばい」
「ッ〜〜!!」
人は経験を重ねると大人になると言うが、これは成長しすぎではないだろうか。こんな色気を出してかっこいい台詞を吐く高校生を彩兎は知らない。
年上なこともありリードしていこうと思っていた彩兎だが、もしかしたら誤算かもしれない。
「カラダ、痛くなかと?」
「はい、大丈夫ですよ。Aが優しくしてくれましたから」
先程の照れさせられた仕返しを含めて、彩兎も意味深に言った。作戦は成功だ。Aの顔が赤く染まる。
「そ、それはよかとね!俺が朝ご飯作っちゃるけん、もう少し寝とってよかよ」
言うが早いが、Aはベッドから降りる。Aが着ていたのは彩兎の服だった。
「そうそう。服がなかったからあんたの勝手に借りたばい」
袖と足元が思いっきり長くて捲らないといけない屈辱を味わったのは秘密だ。
「いいんですか?朝ご飯……」
「任せるたい!うんと美味しくて元気が出るやつ作ったるたい!」
にひっと笑ったAは扉の向こうに消えていった。朝ご飯には何を作ってくれるのだろうか、楽しみだ。
Aが戻ってこないことを感じてから彩兎は布団に頭まですっぽり収まった。
恥ずかしくて、Aがかっこよすぎて、心臓がどうにかなりそうだ。体がとても熱い。
今まで我慢してきたぶん、一緒になれるとわかったからお互い自分の気持ちに正直になった。特にお互いの前では。今後これは寝ぼけているのではなくて通常運転にするつもりだ。
これから、私とずっと一緒……。
朝こんなふうにイチャイチャしながら起きて学校に行って、帰ってきたら「おかえり」と声がするのだ。なんて幸せだろう。
もう二度と、離さない。独りにもさせない。
この幸福の中、彩兎は静かに決意した。
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埋夜冬(プロフ) - 。#vllさん» そうなんですか!?これの発案者は作者のお友達なんですけど、その子がどうしても兎を名前に入れたいって言ってました。ヤンデレ好きなので関係しているかもしれないですね!最後までお読みくださりありがとうございました! (2019年10月25日 23時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
。#vll - 兎系の人はやんでれと聞いたことがあります、彩兎くんの名前と関係してそー。と勝手に考えていました。とても面白い作品でした。♪ヽ(´▽`)/ (2019年10月25日 12時) (レス) id: 01ebef5845 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 紫園さん» どうもありがとうございます!二人とも尊く書けたのからよかったです!方言は私も書いてて楽しかったです!この作品を好きになっていただきありがとうございました! (2019年5月1日 18時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
紫園(プロフ) - 最後までお疲れ様でした!本当に尊い2人です(´;ω;`)方言とかも最高でした! (2019年4月28日 16時) (レス) id: a3fbe17e50 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 李守文さん» 嬉しい限りですありがとうございます!!!私も博多弁書いてて楽しかったです!そして同じように日常で使いました(笑) 今後も作品を出していきますのでどうぞよろしくお願いします!この作品を好きにいただいてありがとうございました♪ (2019年4月27日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年1月26日 16時