兎27匹 ページ30
何だが頭がふわふわする。普段とは違う香りが鼻を掠めて、Aはうっすらと目を開けた。
白い布団とベッド。起き上がり辺りを見回すと机とクローゼットが目に入った。一人部屋のような空間だ。
Aは寝る前に何をしていたか記憶を巡らせた。確か……彩兎と話していたはずだ。保健室で、彩兎と話す最後の日。そこで紅茶を飲んで、それで――――――。
「おや、意外と早かったですね。おはようございます」
扉を開けたのは彩兎だった。信じたくないが、記憶が正しければ彩兎は紅茶に何か入れただろう。
「俺に何したと？」
「何も。紅茶に薬を混ぜて、少し寝てもらいました」
近付いてくる彩兎を見てAはその分うしろに逃げた。途端に彩兎の顔が歪む。まるで「どうして避けるの？」泣きそうに聞く子供のようで、罪悪感が募る。
「どげんして、俺をここに連れてきたん？ってかここは何処かいな」
「……座っても？」
泣きそうに顔を歪めてから動かなくなった彩兎はそう聞いた。Aが頷いてから彩兎は隣に座る。
「……ここは私の家の空き部屋です」
彩兎の家！？とAは驚く。こんな綺麗な部屋なのに空き部屋なのか、使われていないのか。
「それと何でここに連れてきたのかという質問は……そうですね……」
何と言ったらAは今の状態を納得してくれるだろうか。たぶん何を言っても納得してくれない。ここは本心で語るしかないか、と彩兎は腹を括る。
「―――愛しているからです」
そんな言葉を予想していなかったAは目をパチクリとさせる。愛しているから、紅茶に何か薬を混ぜたのか？
それは、Aの知っている愛情表現ではない。
「愛しとーたら、普通は薬混ぜて飲ませんばい」
「大丈夫ですよ。副作用が無くて即効性のものを探しましたから。体に異常はないでしょう？」
確かに意識ははっきりしているし、痛みなどもない。だがそういう問題ではないだろう。
「あんたはどげんして俺に飲ませたと？」
一番聞きたいことだ。普段から優しくて基本的に相手に嫌な思いをさせないように気を遣っている彩兎が、同意もなしにこんなことをするだなんて。きっと理由がある。
「……離れてほしくないからです」
その声は震えていた。
「貴方のことが好きだから、離れていってしまうのが怖かった…！教師として失格なのなんてとっくに分かってます！それでも……隣にいてほしかった！」
想いを伝えポロポロと涙を溢す彩兎はとても綺麗だと、Aはこんな状況なのに考えた。
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埋夜冬(プロフ) - 。#vllさん» そうなんですか！？これの発案者は作者のお友達なんですけど、その子がどうしても兎を名前に入れたいって言ってました。ヤンデレ好きなので関係しているかもしれないですね！最後までお読みくださりありがとうございました！ (2019年10月25日 23時) (
レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
。#vll - 兎系の人はやんでれと聞いたことがあります、彩兎くんの名前と関係してそー。と勝手に考えていました。とても面白い作品でした。♪ヽ(´▽｀)/ (2019年10月25日 12時) (レス) id: 01ebef5845 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 紫園さん» どうもありがとうございます！二人とも尊く書けたのからよかったです！方言は私も書いてて楽しかったです！この作品を好きになっていただきありがとうございました！ (2019年5月1日 18時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
紫園(プロフ) - 最後までお疲れ様でした！本当に尊い2人です(´；ω；｀)方言とかも最高でした！ (2019年4月28日 16時) (レス) id: a3fbe17e50 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 李守文さん» 嬉しい限りですありがとうございます！！！私も博多弁書いてて楽しかったです！そして同じように日常で使いました(笑) 今後も作品を出していきますのでどうぞよろしくお願いします！この作品を好きにいただいてありがとうございました♪ (2019年4月27日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作成日時：2019年1月26日 16時
