兎21匹 ページ24
もし、彩兎の考えが上手くいくのであれば彩兎の願いは叶えられたも同然だ。Aは優しいので断れないだろう。
「痛―――!」
「ッ!?どうかしたと!?」
書類を書こうとペンを持った時、意外と右腕が痛かった。力を入れるのに筋肉を動かすので怪我をしていると辛いのだ。
そんなことAには分からない。また怪我をしたのかと心配で駆け寄った。
「あ、いえ。大丈夫ですよ。少し右腕が痛んだだけですから」
彩兎は安心させるように微笑むと、何故かAは余計眉を寄せ悲しそうな顔になってしまった。
「天崎くん?」
全てはAが喧嘩をしなければ起こらなかったこと。だからAはずっと自分を責めている。彩兎に無理をさせているのだ。痛いのに我慢させている。その事実がAを苦しめた。
「手伝うたい」
「いえ。これは大切な書類なので私が家で書けるときに書きますよ。やはり転んだばかりなので休ませないとですね」
書類を書く机から立ちAの特等席のあるソファーへ移動した。座り、特等席をトントンと叩いてAも座るように促す。
彩兎は機嫌が良くなった。何故なら、自分の馬鹿げた考えが上手くいくと悟ったから。
Aがもっと離れなくなるように。そのためにはAの意識を変えることが必要になる。
好きだから。離れたくないから。その考えは正しいけど儚いものだ。だからもっと深くに嵌まらせるように。
――――この人には、自分がいないと死んでしまう。と思わせるように。
すべきことは簡単だ。彩兎がたくさん怪我をし、それをAに手当てさせる。大事なのは利き手を怪我すること。または利き手でも届かない場所を怪我すること。そうすれば手当てする相手が必然的に必要になる。
初めは最近怪我が多いな、くらいの認識だろう。でも続けるうちに心配になってくる。Aは優しくて鈍感だから、心配して注意深く彩兎を見る。その辺りで怪我しそうなところを助けてもらえば完成だ。「天崎くんがいないとそのうち死んでしまうかもしれませんね……」と言えばAの意識は変わる。
離れたくない、なんて生ぬるいから、離れたら彩兎は死ぬかもしれない、に。
先程、彩兎が痛いと言うだけで駆け寄ってきたAを見て彩兎はこの作戦が成功すると感じた。
嗚呼、早くAが”こちら“に来てくれますように。
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埋夜冬(プロフ) - 。#vllさん» そうなんですか!?これの発案者は作者のお友達なんですけど、その子がどうしても兎を名前に入れたいって言ってました。ヤンデレ好きなので関係しているかもしれないですね!最後までお読みくださりありがとうございました! (2019年10月25日 23時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
。#vll - 兎系の人はやんでれと聞いたことがあります、彩兎くんの名前と関係してそー。と勝手に考えていました。とても面白い作品でした。♪ヽ(´▽`)/ (2019年10月25日 12時) (レス) id: 01ebef5845 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 紫園さん» どうもありがとうございます!二人とも尊く書けたのからよかったです!方言は私も書いてて楽しかったです!この作品を好きになっていただきありがとうございました! (2019年5月1日 18時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
紫園(プロフ) - 最後までお疲れ様でした!本当に尊い2人です(´;ω;`)方言とかも最高でした! (2019年4月28日 16時) (レス) id: a3fbe17e50 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 李守文さん» 嬉しい限りですありがとうございます!!!私も博多弁書いてて楽しかったです!そして同じように日常で使いました(笑) 今後も作品を出していきますのでどうぞよろしくお願いします!この作品を好きにいただいてありがとうございました♪ (2019年4月27日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年1月26日 16時