兎20匹 ページ23
朝、チャイムが鳴るギリギリで学校に来たAはその光景に驚いた。
「な、な、何があったと!?」
目の前にいるのはAの想い人である彩兎。だが彩兎の右腕には血が垂れていた。今の彩兎は自身でその血を拭き取っているところだった。
「あ、おはようございます天崎くん。もうそんな時間でしたか。駄目ですね、天崎くんが来る前に終わらせたかったんですが」
彩兎は短くため息を吐いた。血を拭いていた手を止める。
「何を呑気に言うとると!?何があったんか話しぃや!!」
保健室の備品に何があるか、どこにその備品があるのかは知り尽くしている。毎日保健室登校しているのだ。
Aは必要そうなものを一通りソファーに広げて彩兎の隣に座る。
「手ぇ伸ばしぃ。痛くない程度な。……で、何があったと?」
消毒液で血を拭き取りながら彩兎に聞く。右腕は、この前不良に殴られた場所だ。彩兎なら早く治すためにあまり使わないようにしていたはずだ。保健教諭でもあるわけだし。
「包帯を変えたかったんですよ。湿布は数時間で効果が切れますからね。ですが左は利き手じゃないので包帯を付けれないまま学校に来ました。出来るだけ、使わないようにしたかったんですけど……」
彩兎は保健室の端に置いてある段ボールに目をやった。
「こういう時に限って色々任されるんですよね」
「誰に頼まれたとか?」
彩兎の綺麗な腕がこんなに痛々しい怪我をしていると言うのに。任せた教師には制裁を下さねば。
「だ、大丈夫ですよ!私ができるって言って引き受けましたから!」
彩兎がそこまで言うなら制裁はまた今度下そう。
話を戻す。包帯を忘れただけでこれほど血が出るわけない。そのあと何かあったのだ。
「それで任された荷物をここまで運ぼうとして……。あと8段ってところで転んでおちてしまったんですよ」
8段とは。なかなかに高いとこから落ちたな。
結局この怪我も、この前Aが喧嘩しなければならなかった怪我だ。包帯を巻きながらAは顔をしかめた。
「一人じゃ巻けなくて……。助かりました。ありがとうございます」
「ああ……」
このままじゃいけない。Aと居続けたら、彩兎の体はまた怪我をしてしまう。考えろ。馬鹿な頭で、馬鹿なりに精一杯頭を巡らせる。
彩兎がもうAのせいで怪我をしない方法を。
一方、彩兎も同じように考えを巡らせていた。じっと見つめるのは手当てされた包帯。
自分の中で生まれた馬鹿らしい考えに、少しの淡い期待を込めた。
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埋夜冬(プロフ) - 。#vllさん» そうなんですか!?これの発案者は作者のお友達なんですけど、その子がどうしても兎を名前に入れたいって言ってました。ヤンデレ好きなので関係しているかもしれないですね!最後までお読みくださりありがとうございました! (2019年10月25日 23時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
。#vll - 兎系の人はやんでれと聞いたことがあります、彩兎くんの名前と関係してそー。と勝手に考えていました。とても面白い作品でした。♪ヽ(´▽`)/ (2019年10月25日 12時) (レス) id: 01ebef5845 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 紫園さん» どうもありがとうございます!二人とも尊く書けたのからよかったです!方言は私も書いてて楽しかったです!この作品を好きになっていただきありがとうございました! (2019年5月1日 18時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
紫園(プロフ) - 最後までお疲れ様でした!本当に尊い2人です(´;ω;`)方言とかも最高でした! (2019年4月28日 16時) (レス) id: a3fbe17e50 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 李守文さん» 嬉しい限りですありがとうございます!!!私も博多弁書いてて楽しかったです!そして同じように日常で使いました(笑) 今後も作品を出していきますのでどうぞよろしくお願いします!この作品を好きにいただいてありがとうございました♪ (2019年4月27日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年1月26日 16時