兎16匹 ページ19
不良を押して倒したのは、まさかの彩兎だった。
「ッ、あんた何でこげなとこに!?死にたいと!?」
いきなり彩兎が乱入したことに敵も驚いているのか攻撃を仕掛けてこない。
Aと彩兎は喧嘩になりそうなことなんて忘れたかのように言い合いを始めた。
「違います!買い物に行った帰りだったんですよ!路地裏から何だか見知った声が聞こえると思って覗いたら貴方が囲まれてるじゃないですか!助けるに決まっているでしょう!?」
「馬鹿かいな!?喧嘩の声聞こえてるんに入る奴がどこに居ると!!?あんた俺じゃなかったら巻き込まれとるとよ!反省しぃな!」
「結局天崎くんだったからいいじゃないですか!」
「何言うとると!?助けなんか要らん!はよ逃げな!」
「嫌です!一緒に逃げましょう!」
ああ言えばこう言う、なんて言葉をあらわしたかのような言い合いだ。だがAに喧嘩を吹っ掛けた方からしたら暇な時間になる。不良は暇になるとイライラし出すのだ。
「……おいてめぇら。無視とは良い度胸だなオラァ!」
勢いを取り戻した不良達はまた戦闘態勢に入る。
喧嘩は彩兎がいるので余計やりたくない。だが喧嘩をしないと彩兎のことは守れない。どうすればこの状況を……。
「ッ―――――、後ろ!」
ふと彩兎の方を見ると彩兎に押され倒れた不良の一人が彩兎に殴り掛かろうとしていた。
振り返ると同時に右腕で顔を守った彩兎は、初めて不良の拳を受け倒れた。
その状況にAは目を見開く。
彩兎が倒れた。殴られた。自分の大切な人を守れなかった。
煮えたぎる怒りと、彩兎を守れなかった不甲斐なさが心に広がる。
「てめぇら……」
出したことがないほど低い声が辺りを揺らした。
「もう容赦せんばい」
分からせてやる。お前らが喧嘩を売ったのは、あの『福岡の稲妻』であることを。文字通り叩き込んで2度と手出しできないようにしてやる。覚悟しろよ、雑魚共が。
今までの喧嘩では受けたことのない殺気に、不良達はたじろいた。本能が、これはまずいと叫んでいる。だがしかし、この不良達も逃げ出すことは出来ないのだ。己のプライドがある。
「や、やっちまえ!」
その声で動いたのはAだった。
福岡の稲妻は、揺れる金髪と素早い動きで敵を瞬殺していくから付けられた名だ。
彩兎には悪いが、約束は守れそうにない。世の大人たちは時には暴力が解決すると言っていた気がする。なら今がその時だ。
Aは拳に己の力を込めた。
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埋夜冬(プロフ) - 。#vllさん» そうなんですか!?これの発案者は作者のお友達なんですけど、その子がどうしても兎を名前に入れたいって言ってました。ヤンデレ好きなので関係しているかもしれないですね!最後までお読みくださりありがとうございました! (2019年10月25日 23時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
。#vll - 兎系の人はやんでれと聞いたことがあります、彩兎くんの名前と関係してそー。と勝手に考えていました。とても面白い作品でした。♪ヽ(´▽`)/ (2019年10月25日 12時) (レス) id: 01ebef5845 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 紫園さん» どうもありがとうございます!二人とも尊く書けたのからよかったです!方言は私も書いてて楽しかったです!この作品を好きになっていただきありがとうございました! (2019年5月1日 18時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
紫園(プロフ) - 最後までお疲れ様でした!本当に尊い2人です(´;ω;`)方言とかも最高でした! (2019年4月28日 16時) (レス) id: a3fbe17e50 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 李守文さん» 嬉しい限りですありがとうございます!!!私も博多弁書いてて楽しかったです!そして同じように日常で使いました(笑) 今後も作品を出していきますのでどうぞよろしくお願いします!この作品を好きにいただいてありがとうございました♪ (2019年4月27日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年1月26日 16時