願い 30 ページ31
あれからオルバは、たまに花畑に行くようになった。Aのお気に入りの場所。彼のことをさらに知れた気がして嬉しかった。
今度は俺ののお気に入りの場所を見つけて連れて行ってやらねばな。と悪魔はいつにも増して上機嫌だ。
だが、そんな上機嫌はあの花畑から帰ってきた瞬間に一気に冷めた。
｢ありがとうございます。作りすぎちゃったんで困ってたんですよ。消化にもいいと思うんで！｣
オルバが帰ってきた時にいたのは隣人の上杉だ。手には鍋を持っていて、部屋に入ってキッチンにその鍋を置いた。
中には卵の雑炊が入っていた。なるほど、確かに消化には良さそうだ。
｢本当にいいんですか？｣
｢はい。美味しいかどうかは分かりませんが、俺、少しでも力になりたいんで！｣
上杉はあれから完璧にAに惚れてしまったらしい。Aを見る目が初めて会った時と違っている気がする。
駄目だぞ上杉。コイツはお前が知ってるような儚い系ではない！騙されるな！俺の方が何倍もコイツのことを知ってるんだから、お前は大人しく帰れ今ずく帰れ！！
と、何だか心がモヤモヤする。まだだ。上杉とAが仲良くすると、脳が、心が、嫌な気分になる。
Aは、上杉がどうしてこんなに手助けしようとしてくれるのか分からなかった。だから鍋を持ってきて食事どうですかと言われた時にはとても驚いた。そして、悪魔がもし人間だったら同じようにするんだろうなとまた上杉と悪魔を重ねた。
｢ありがとうございます｣
最近のAはよく話すようになったし、笑うようになった。それは悪魔のおかげで、Aの表情筋が働くのは悪魔といるときだけだった。
上杉と悪魔を重ねているから、自然と上杉の前では表情筋が柔らかくなってしまう。
｢俺、Aさんの笑顔素敵だなって思います。もっと笑えばいいのに｣
上杉はつい思ったことを口にした。目をパチクリさせるAを見て慌て出す。
｢Aは最近よく笑うぞ？｣
悪魔は首を傾げる。
｢僕今笑ってました？｣
｢はい！ふふって感じで！｣
ちょうどその時上杉の携帯に連絡が入る。どうやら大学のレポートの期限が短くなったようで慌てて帰っていった。
上杉が帰ってからAは全く動かない。悪魔が呼んでも返事がなかった。
｢A、どうかした―――――――｣
か、と言おうとして止まった。Aの顔が真っ赤になっていたから。そのまま顔を覆ってしゃがみこんでしまった。
｢……ぜんぶ悪魔のせいだ…｣
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ルティン - はい！応援しています！また読みに来ますね！ (2021年8月3日 18時) (
レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ルティンさん» 嬉しい限りです！！この作品をこんなに好きになって下さりありがとうございます！これからもっと精進致しますのでよろしくお願いします！ (2021年8月3日 16時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ルティン - この作品ほんとすごい！もう3回も読み返しています…！しかも期間を空けて！何度も読みたくなる、素晴らしい作品をありがとうございます！！これからも頑張ってくださいね！！ (2021年8月3日 15時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゆきさん» うわぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます！！泣かせたかったので泣かせられたなら満足です(笑)最後までお読みくださりありがとうございました！ (2020年7月11日 9時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 一言いいですか？...神作者じゃないですか！？貴方様の小説最高すぎるんですよ？！思わず泣いちゃったじゃないですか！...以上、長文失礼致しました。 (2020年7月11日 9時) (レス) id: 1ca0293e4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作成日時：2019年12月7日 8時
