願い 24 ページ25
次の日、一通りの検査を終えたAは帰ることができるらしい。もう筋肉は普通に動くし家で落ち着きたいと駄々をこねている。坂本も困り顔だ。
「それじゃあ、少しでも身体に変なことが起きたらすぐに病院に来るんだよ。入院はさせないから検査だけでも受けに来てくれ」
「分かってますよ。ありがとうございました」
病院でもらった資料が入っている封筒と袋を片手に、Aは坂本が呼んでくれたタクシーに乗って帰る。
家の鍵は閉まっていた。そう言えば坂本が何か言っていた気がするな。まぁいいか。
鍵を開けるといつも通り、物が少なくて生活感のない部屋がお出迎えだ。今日一日料理を作るのが面倒くさくて途中でコンビニに寄ってもらい夕飯を買ってきた。なのでお風呂以外することがない。
「……つかれた」
Aは帰ってすぐベッドに倒れ込んだ。病院は何故こんなに気疲れするのだろうか。1日泊まっても疲れが取れないとは何なんだ。
「俺はとても楽しかったぞ!病院には色んな部屋があって驚いた。すごかったのは手術室でな!俺が入った時はまさにメスで寝てる奴の腹を―――――」
「やめてよ、そういうの嫌いなんだから」
倒れた状態のままジトっと悪魔を睨むと、彼は肩をすくませ話を止めた。ホラーはいいのに血が出るものは駄目なのか。基準がよく分からないが、追及するとあしらわれそうだ。やめておこう。
「そうそう、この袋は何だ?俺、ずっと気になっていたんだが」
オルバは袋を覗く。触れないので何の袋なのかが分からない。
これは坂本が帰りにAに持たせたものだ。何て言っていたかな、確か……「倒れているのを見つけてくれたお隣さんに渡すんだよ。あの時はありがとうございました、助かりましたとお礼の言葉を告げるのを忘れずにね」。思い出したAは布団に顔を埋めた。
「行きたくない……」
「Aを見つけてくれたお隣さんは良い奴だぞ」
オルバは壁を通り抜けてたまに観察しているらしい。やめてやれよ。
お隣さんとか、両親とともにここへ引っ越した時に会話した記憶しかない。町内会の回覧板はいつもお隣さんに立てかけておくし、そもそもAは外に出ないので会話する機会が無い。
〔ピンポーン〕
最近仕事をさせていないインターフォンが鳴った。誰だろう。
のそのそと起き上がり玄関へ行く。ガチャ、と開けると目の前には男性がいた。
「あ、良かった。帰ってきてたんですね」
右に流した前髪が特徴的な彼は、噂のお隣さんだ。
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ルティン - はい!応援しています!また読みに来ますね! (2021年8月3日 18時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ルティンさん» 嬉しい限りです!!この作品をこんなに好きになって下さりありがとうございます!これからもっと精進致しますのでよろしくお願いします! (2021年8月3日 16時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ルティン - この作品ほんとすごい!もう3回も読み返しています…!しかも期間を空けて!何度も読みたくなる、素晴らしい作品をありがとうございます!!これからも頑張ってくださいね!! (2021年8月3日 15時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゆきさん» うわぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!!泣かせたかったので泣かせられたなら満足です(笑)最後までお読みくださりありがとうございました! (2020年7月11日 9時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 一言いいですか?...神作者じゃないですか!?貴方様の小説最高すぎるんですよ?!思わず泣いちゃったじゃないですか!...以上、長文失礼致しました。 (2020年7月11日 9時) (レス) id: 1ca0293e4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年12月7日 8時