願い 10 ページ11
悪魔に名前を付けてから1週間が経った。Aの気を辿って帰ってこれるようになったオルバは朝起きてAに一言告げては周辺を見に行くようになった。おかげでいない間は家が静かでいつも通りなのだが、夜になり帰ってくると報告してくるのでうるさくてたまらない。
ほら今夜も。
「Aただいま!今日はな、映画とやらを観てきたんだ!あれはすごいな!すくりーん、とかいうとても大きい画面の中で人間が喋っているんだ!それに音も大きくてだなぁ!俺が観たのは宇宙で戦う話なんだがな、こう……光る刀をバッと振ったりしてて――――」
「はいはい。楽しそうで良かったね」
ちなみにここ1週間の報告で一番騒いだのは飛行機の存在だ。あれはとんでもないものだと興奮していた。自分だって空飛べるくせにと思ったし言ったが、本人的にはそういうことじゃないらしい。意味がわからなかったので放っておいた。
「Aは観たことあるか!?映画ってやつ」
映画……と悩み思い出す。最後に行ったのは確か、十数年前だ。当時の自分も両親に連れられて、こうやって興奮していたに違いない。
「あるよ。もうずっと昔だけど」
「そうか!一度行ったことがあるなら大丈夫だな。俺もいつかAと行きたい!」
驚いてオルバを見る。彼はいつも通り太陽のようにニッコリ笑っていた。
「何で?」
オルバはA以外に見えていないのだからお金を払う必要がない。席を取らなくても良いが、Aはお金を取られる。何よりそこまで観たい映画なんてない。
だがオルバはきょとんと聞き返す。
「映画はとても親しい者同士や家族が一緒に行って共に感動するものなのだろう。なら俺たちが行かなくてどうする!?」
「いやどうもしないから落ち着いて」
つまりオルバにとってAは親しい者、もしくは家族のような存在だと言うことだ。どちらかと言うと自分が親でオルバが子供だろうな、性格的に。とAは思う。
「何故だ!?良いじゃないか〜映画一緒に観たいんだよ〜その後カラオケってやつにも行ってみたいんだよ〜」
「一人で行って」
「行ってくれたら2日ぐらい海外でバカンスしてるからぁ!!」
ピクッ。Aはあからさまに反応した。オルバが海外に行っている間は家は静かになる。そのために映画とカラオケ……。Aはめちゃくちゃ悩んだ。
「……分かった、行くよ。映画とカラオケ」
「本当か!?やった!」
かくして、明日は映画とカラオケに行くことになった。
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ルティン - はい!応援しています!また読みに来ますね! (2021年8月3日 18時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ルティンさん» 嬉しい限りです!!この作品をこんなに好きになって下さりありがとうございます!これからもっと精進致しますのでよろしくお願いします! (2021年8月3日 16時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ルティン - この作品ほんとすごい!もう3回も読み返しています…!しかも期間を空けて!何度も読みたくなる、素晴らしい作品をありがとうございます!!これからも頑張ってくださいね!! (2021年8月3日 15時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゆきさん» うわぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!!泣かせたかったので泣かせられたなら満足です(笑)最後までお読みくださりありがとうございました! (2020年7月11日 9時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 一言いいですか?...神作者じゃないですか!?貴方様の小説最高すぎるんですよ?!思わず泣いちゃったじゃないですか!...以上、長文失礼致しました。 (2020年7月11日 9時) (レス) id: 1ca0293e4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年12月7日 8時