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コソコソ第肆拾弐話 ページ42

「A」
「はい?」

手を絡めながら家に戻る。
彼女の手は柔らかくて温かい。


「君は本当は自分が何者なのか分かっているんじゃないのか?」

少なくとも記憶喪失では無い。
彼女は小さく笑う。

「…そうですねぇ」
「親が心配しているのでは無いのか…?」
「大丈夫ですよ」
「消えたあの三ヶ月間の時に会いにでも行ったのか?」
「…そうですね」
「君は……」


俺はAの事を知っているようで、根本的なものを知らない。
彼女はのらりくらりと俺の質問に曖昧な答えで返す。

「私のことより杏寿郎さん」

Aは夜空を見上げた。

「明日、任務から帰って来たら何が食べたいですか?やっぱりさつまいもですか?」
「君の料理ならなんでもいい。君が居てくれるだけでいい」

Aは明るく笑う。
声は震えていた。

「そう言う答えが一番困ってしまうんですよ〜?」
「君は明日、死んでしまうのか?」



ぽつりと聞いてしまった。
彼女が今にも消えてしまいそうだった。

彼女は一瞬固まったが、すぐに笑う。

「もう、死にませんよ〜、杏寿郎さんの白無垢姿を見るまでは死ねません〜」
「式は挙げないと言っていたのにか?」
「あー、では、明日の任務が終わったら式挙げましょうよ!そんな大きな式じゃなくて…」
「君は袴でも着るつもりか?」
「はいはい、そうです!逆でいきましょう?とっても楽しそうです。杏寿郎さんが白無垢で私が紋付羽織袴!お義父さまと、千寿郎さんにも女性の着物を着てもらいましょう!」
「よもや!!千寿郎もか!?」

Aの楽しそうに笑う姿を見ながら、明日、彼女が消えてしまう気がした。


「杏寿郎さん、明日は任務なんですから、早く寝てください」

いつもの任務の日は彼女はこんな事は言わないが、今日は何度もそう言った。


「君の部屋に行ってもいいだろうか」
「ダメです。今日は沢山寝てください!」


家が見えてくると、彼女が手を離し走り出した。


「杏寿郎さん、大好きです」

それだけ言って、パタパタと部屋に入って行ってしまった。



「…よもや」

その日は彼女の言う通り早く寝た。
彼女の部屋に行こうかとも思ったが、行くのをやめた。


***

翌朝、朝早く起きて、素振りをして少したった後、千寿郎が縁側に出てきて、お茶を出した。

「兄上、おはようございます」
「あぁ!おはよう!そういえば、Aはもう起きていたか?」
「いえ、まだ部屋にいるかと…」

俺は嫌な予感がし、竹刀を置いた。

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古猫丸(プロフ) - yersk0402さん» これはこれはyersk0402様!!いつも胸きゅんコメントありがとうございます〜!!本当に嬉しくて、私もコメントを見た瞬間きゅんきゅんしっぱなしです!(/ω\)いつもコメントありがとうございます!!m(_ _)m (2020年12月1日 0時) (レス) id: a0dec71c2f (このIDを非表示/違反報告)
古猫丸(プロフ) - みゆさん» みゆ様ァァ!!ありがとうございます〜!!。゚(゚´Д`゚)゚。嬉し過ぎてなんと言葉に表せばいいのでしょうか!!とても嬉しくて励みになりっぱなしです!!コメントありがとうございました!!m(_ _)m (2020年11月30日 23時) (レス) id: a0dec71c2f (このIDを非表示/違反報告)
yersk0402(プロフ) - 煉獄さんにもっともっと愛されたーいです!ずっときゅんきゅん、しっ放し!あたしも心臓ばくばくです! (2020年11月30日 22時) (レス) id: 04e5911f66 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ - またまた来ましたヾ(*´∀`*)ノ お話が大好きで更新されるのを待ってました(*´ω`*) 今後がますます気になり過ぎて更新されるのを楽しみに待ちたいと思います(つ´∀`)つ (2020年11月30日 22時) (レス) id: ad229492c1 (このIDを非表示/違反報告)
古猫丸(プロフ) - みゆさん» わぁぁぁ!!ありがとうございます!。゚(゚´Д`゚)゚。そう言っていただけると、やる気が出ます〜!!これからもよろしくお願いいたしますっ!!m(_ _)mコメントありがとうございますした! (2020年11月26日 3時) (レス) id: dd08b68fc6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:古猫丸 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年11月3日 19時

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