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第5.37話 君が流した涙 ページ38

私は持っている力を振り絞り、上半身を起こすと、
座ったままその弓を人差し指で弾いた。


ビ───ン


弦の音が鳴り響き、空気を震わせた。


『やめろ!』


タイ兄は耳を塞ぎ、私に向かって剣を
突きたてようとしたが、よろけて膝をついた。

私は必死で弦を鳴らす。


「鳴弦だ」


もっけの声が聞こえてきた。
私は目を閉じながら、息が続く限り、奏でようとしている。


ビン、ビン、ビン……


琴よりも低い音色が、暗闇に響き渡る。

片手で耳を抑え片手に剣を持ったタイ兄は、
恐ろしい形相で私に歩み寄る。


「タイ兄」


その時、私が目を開けてタイ兄を見上げた。


「タイ兄、御免なさい。妹なのに何も知らなくて。何も出来なくて」

『黙れ! あんたは俺の妹じゃない』

「タイ兄は良い人。もっけとスネリの毒の周りを遅くしてくれた。
ペンダントも捨てずに持っていてくれた」

『愚かな。何もかも、悠久の玉を手に入れる為だというのに』


「それでも、タイ兄の心の中に綺麗な魂があるって……分かる」

『五月蝿い!』

「カザンの事だって、本当は道具だなんて思っていないよね。
カザンが帰った後、タイ兄が流した涙を見たよ」

『嘘だ! お前は気を失っていたはずだ。見える訳がない!』


タイ兄は、否定するように首を振ると、
鳴弦の音に耐えながら剣を振り上げた。

そして、一気に私の胸に下ろそうとしたのを見た
私は、目をぎゅっと瞑った。その瞬間、


ヒュン!


タイ兄の胸に一筋の光が突き刺さった。
光る矢だった。

もっけとスネリの念で作った矢。
タイ兄は胸を抑えると、その場に倒れた。

私が駆け寄り、タイ兄に触れようとすると、


『俺に……触る……な』


息も絶え絶えのタイ兄が
燃えるような敵意の目で、私を睨んだ。

第5.38話 兄を妖界へ 祝160個目→←第5.36話 信じたい


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作者名:フェイル | 作成日時:2010年12月8日 21時

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