世界一綺麗な音【宇髄天元】

18音目 ページ21

「氷の呼吸は体温を下げることによって力が大きくなります

肺から出る息も同じようにとても冷たい

そのため、自身の体は氷のように膜を張って凍ってしまう

それを壊すには自身の心と

継承者の力が必要なんですっ……！」



氷の中で血液がじわじわと虫のように動く


あれはAのか、雪南のか……

そんなのわからないくらい俺は焦っていた

どうするべきなのか

でも考える暇もなく雪南は話し続ける




「俺の氷の呼吸は俺の代までコツコツと静かに継承されていった

その裏にはこんな事実がある

継承者1人につき99の犠牲が必要となる……と

俺が見つけた俺の呼吸に合う人は全員氷に呑まれてしまった



最後の継承者だったAも、何年経っても症状を表さなかった

継承者は静かに速く準備を済ませ、凍りはじめるのに

Aは15になっても凍らなかった

だから俺はもう、辞めてたんだ……」


苦しそうに話す雪南


呼吸をしているだけで喉が凍りつきそうで痛いのに

話せるってどういう事だよ……




「俺のせいで、俺の先代が作り出した呼吸のせいで


何百の人が死んでいくんだ……っ……


もう、この呼吸を捨てていたのにっ……

俺は人を守りたかったのに……っ


またこうだ……っ、本当は来たくなかった

この子に同じ思いをさせたくなかった……




でも１%でも、可能性があるなら……

見守る仲間が居るのなら……

頑張ろうって思えたんだ」




「…………」




雪南の流した涙は氷の粒になって

パキッ

パキッ

と音を立てて凍った風呂の湯に当たる




「今Aは自身の氷の檻の中です

少しでも早く氷に慣れて、自身の氷を溶かし尽くせるくらいにするために

氷と一体化させて、俺の呼吸でAの身体に傷を付けて意識を少しでもこちらに来させるようにしています



宇髄さん、貴方の声ならきっと届くからっ……

Aにかけてあげて……」


「……あぁ、派手にぶちかましてやるっ！！


_______Aっ！！！」


ーーーーーーーーーーーーーーーー
Aside


パキッパキッ


……なんの音だろう

ここ……どこ？

私…………何してたんだっけ……



私を囲む氷の檻

触れたら痛みと共に皮膚が剥がれた

そのくらい冷たくて固い檻




寒い……



パキッパキッ




氷の檻をすり抜けて上から落ちてくるなにか

パキッと音を鳴らし床に打ち付けられるなにか




『氷の……粒？』




確かにそれは氷なのに

暖かくて不思議な感じがした……

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