19 ページ20
『マジふざけてる』
私はそう呟きながらベランダで煙草の煙を吐き出した。これで禁煙失敗である、しかしこの煙草を家に置いていった亮くんと、私のことをクビにした会社が悪い。
『あ”ー、どうしよ』
元々上のミスで倒産の危機と言われ残業しまくりブラック会社相当で働きまくった結果、案の定会社は倒産して私は解雇された。あんだけ頑張ったんだからなんか次の就職先見つけるとかしてくれよ、と脳内で叫び続ける。
昼間は暖かくなってきた春先、亮くんは映画の撮影で中国まで飛んでしまっている。キングダムが実写化で彼が出ると伝えられたときそれは驚いた、勿論好んで読んでいた漫画だったからだ。しかし今は、なぜ中国にいるんだとそれでさえも苛立ちが湧く。
帰ってきてからむしゃくしゃしていて着替えていなかったスーツのポケットに入れてあったスマホを取り出し、亮くんのLINEをタップした。
_「もしもし〜??」
まさか出るとは思わなかった。
煙草の煙を吐ききって「もしもし」と言えば、恋しい彼の声が脳を震わせた。彼の声を聞いてしまったら泣いてしまうかもしれないと思っていたが意外と大丈夫かもしれない。
_「あ、煙草吸ってるだろ」
『禁煙失敗した、亮くんが置いて行ったのが悪い』
_「えぇ、俺かよ」
そう言って笑う彼の声を聞いたら少し落ち着いた気がして、空を見上げた私は小さく呟いた。
『...会社クビなった』
_「...お疲れ様」
そう行った彼の声は酷く優してくて、思わず涙腺が緩んで震えた声のまま「ありがとう」とお礼を伝えた。それを感じ取ったのか「A」と優しい声で名前を呼ばれて、私は「大丈夫だよ」と伝えて、微かに濡れた頬を拭った。
『もう、亮くんに会いたい』
_「ごめんなぁ。俺も国内だったらすぐ会いに行ったのに」
『ビューンって??』
_「そう、ビューンって」
私の我儘が溢れた言葉をしっかりと受け取ってくれた彼に笑うが、その言葉に本当に会いたくなった私は思わず声をあげた。
『決めた、中国まで行くね、場所どこだっけ??』
_「え??」
『明日...は寝たいから、明後日行く』
_「待って??行動力やばいね??」
『場所は??』
_「浙江省だけど...」
『オッケー、時間わかったらまた連絡する!!』
そう言って電話を切った私は、吸い終えたタバコを灰皿に捨ててベランダから部屋に戻った。仕事仕事で社畜生活を送っていたが久しぶりに旅行だ、私はイライラを忘れるようにシャワー室に向かった。
852人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
〜空〜(プロフ) - 続き楽しみにしてます!! (2020年12月18日 18時) (レス) id: 0dde4696e9 (このIDを非表示/違反報告)
Yui(プロフ) - 続き気になります!更新待ってます! (2020年10月7日 0時) (レス) id: 1c6164a0e9 (このIDを非表示/違反報告)
mono(プロフ) - Chiroruさん» ありがとうございます!!ご指摘ありがとうございます、どうしてもズレてしまうようで汗 これからもご愛読よろしくお願いいたします!! (2020年8月13日 18時) (レス) id: 51c364b744 (このIDを非表示/違反報告)
Chiroru - monoさん!毎日更新されるのがたのしみです!!また、23、24、23となってます! (2020年8月7日 23時) (レス) id: d654b36b98 (このIDを非表示/違反報告)
mono(プロフ) - uka8502さん» ありがとうございます! (2020年8月3日 14時) (レス) id: 51c364b744 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:mono | 作成日時:2020年7月26日 20時