[wrwrd]青に溶ける (ページ28)

今日:4 hit、昨日:4 hit、合計:104,350 hit

２６ページ28

突然の質問に糸が掴めないが、今日の予定業務をさっと考えつつ、自分の耳でだけ聴いて居る他の部署の事情も考え込んだ。

「はい、後要請が来て居るのはありませんよ」

「そか」

さっと立ち上がり、ぱんっ、と大きく手を叩いた。その音に弾かれるようにして、隈の目立つ補佐もホワイトカラーも、目の前の最高幹部を見遣る。

「外務の案件片付けて、今日はもう全員定時上がりや！」

文句は言わせん、と言って、悪そうで、不敵な笑顔。こう言う処があるから、女だけじゃなく、誰にでも好かれる処があるんだと思う。

「皆帰って酒飲んで寝ろ！ええな？幹部命令や」

クエスチョンマーク何て語尾につけたが、最早確認だ。

皆、その上司の言葉に困惑しながらも、矢張り歓喜は拭い切れないらしく、一様にほっとしたり、嬉しそうな色をその態度に覗かせる。

「よっし、行くでA、マンちゃんの所やな？」

はい、と一寸圧倒されながらも頷いた。こんな風に仕事をするこの人は超が付く程に珍しい。

「一秒でも早く業務全部終わらせたるわ」

何時も、名前に『ちゃん』を付けて丁寧に呼ぶ幹部は、そんな事でさえ忘れているみたいに、一寸子供みたいな笑顔に悪ガキみたいな要素を滲ませて笑っている。

最早彼には定時上がりと言う先の『休み』しか見えてはいないだろう。私も早々人の事は言えないが。

「……はい、ご一緒します」

こう言う風にするから、仕事への態度だって怒り切れないんだ。抑えきれない微笑が口元にふわっと零れた。

責任転嫁する様に心の中で呟きながら、廊下をずんずん進む我が上司の背を追う。

嗚呼、やっぱり、此の人を尊敬している。軽蔑しきれないのが何よりの証拠だ。

屑だ無能だと言われるけど、そんな訳ない。

見る目がないと言うなら、もうそれでいい。

目も眩む様な陽光が窓から注がれている。

＊＊

造って三日しか経って無いと言うのに、総合ヒット数が1000超えました。

……？？？(困惑)

お気に入りや評価も頂いて、本当に光栄です。

何だか滅茶苦茶な所のある主人公と展開ですが、如何か見守って頂けると幸いです。

これからも引き続き、『青に溶ける』をよろしくお願いします。