[wrwrd]青に溶ける (ページ29)

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「A、何時もそればっかだね」

＿＿何が？

「ほら、其れ。一寸褒められる位だよ、そんな風に真面目に訓練兵やったってさ」

……ま、そうだろうとは思うよ。

「じゃ、何で『真面目ちゃん』辞めないの？解ってるのに？」

或る程度は手抜いてるしね。
それ程本気に『真面目』やってる訳じゃない。

「それでも、あんたは周りよりずっと真面目だろ？」

……まあ、君が云うのならそうなんだろうね。
其れに、私を見た奴らは大概悉く、真面目だって言うんだから。
巧く手を抜いてるの、周りも気が付かないくらいじゃないのにね。

「誰の為にそうしてるのさ」

誰の為って、……そうだなあ。
誰かの為だよって言いたいけど、結局自分自身の為だよ、其れでしかない。

私は君みたいにぶっきら棒でも誰かを気遣えるような人間でもないし、理不尽でも謝らなきゃいけない時なんて、駄目だって解ってても相手に言い返しちゃって、結局自己中心的な『お子様』なんだから。

「自分って云う物が中心にある、癖に、他人中心だよね」

……また、矛盾した云い方をしてさ。

「其れ、Aだけは言えないよ」

はは、其れは御尤もな意見だな。

「……そうあり続ける事を肯定はしないけどさ、そう言う処、私は好きだよ」

……そっか。そんな事を云うのは君位だ。

嗚呼、でも、もう時間だ。そろそろ仕事があるんだ、目を醒まして、現実に向かわないと。

それじゃ、又。気が向いたら夢の中に会いに来てよ、歓迎するから。

柔い夕日が照らした兵舎が、夕焼けの中の友人が、遠のいていく。

＊＊

瞼の裏に、柔い陽光を感じて、目を醒ました。

掛った前髪を掻き上げる様にして跳ねのけながら、体をゆっくりと起こす。元々寝起きの悪い方だが、この習慣の御蔭で何とか仕事に出るまでには目を醒ます事に成功できる。

時計を確認すると、起きる時刻の少し前。少しは眼を閉じても良いのかも知れないが、其れを遣ると私なら二度寝して大遅刻は確定。少しゆっくりと朝の準備を始めるとしよう。

昨日は結局定時に上がらせて貰って、今日の分の仕事は全然手を付けてさえいない。堪る事が殆ど確定しているが、仕事を追い立てるように仕事をしなければ。

髪を纏めながら、夢とも現とも、追憶ともつかない夢を思い出した。不定期だが、こんな夢を見る。記憶に沿った夢を、憶えていない筈がない。

忘れる事は少し苦手だ。だからこそこうした夢を見るのだろう。