あたたかくて、さむい日 ページ7
冷たさが口の中を広がって思わず吐き出した吐息は白い風となって私の視界を掠めていく
林檎の様に紅くなった頬は暖かそうで少しでも温もりを感じたくて冷たい指先を頬に押し当てるけど冷たいばかりで諦めた私は指先を必死に擦り合わせた
ゆらりゆらりと目の前を舞う白雪は可憐で儚く見蕩れてしまうほど綺麗
美しい花には棘があるように可憐な白雪にも非情な部分がある様で無情にも必死に擦り合わせた指先をまた冷たく冷やしていく
冷えきった体には寂しさだけが積もってガードレールに体を預け座り込んだ
アスファルトは氷の様に冷たくて動く気力をどんどん奪っていく
寒いとナイーブな気持ちになってしまう私にはどうにも家に帰るまでの道のりが果てしなく感じマフラーと手袋を忘れてしまった自分を責めたい気分だった
どれほど時間が経ったのだろう１時間だったかもしれないしもしかしたらそんなに経っていなかったかもしれない
道の先から靴を鳴らす音が聞こえて誰かの声がした
焦った様な聞きなれたその声は段々と大きくなる靴の音と一緒に私の方へ向かってきた
「何してんだよ」
息をととのえながら話しかけてきた幼馴染みの君はぐるぐる巻に首に巻いていた自らのマフラーを私の首に巻き付けた
そんな事しなくてもいいんだよ
なんて言ったけど気にすんなの一点張り
マフラーを外した君の首筋は紅く、吐き出している白い風は紅色とよく映えて綺麗だった
「送ってやるから一緒行くぞ」
どこまでも優しい君は私を暖かく包み込んでくれる
私の手が紅く染まっているのをめざとい君が見逃す筈もないから後ろで手を絡めていたら
案の定見付けられちゃって手袋してたのにわざわざ外した君は両手で私の手を包んだ
幼い頃は私の方が少し大きかった手のひらは今では君の方が大きくて少し悔しいような嬉しいような気分
私の片手にカイロを持たせてくれた君はカイロを持ってない方の私の手を寒いからって握ってくれた
その手はカイロより暖かい気がして手を温もりが欲しくて少しだけ強く握った
「次も心配だから一緒帰るぞ教室で待っとけな」
うん
「絶対やけんな」
うん
いつもは一言多くてクラスで馬鹿ばっかりしてるくせに私が寂しい時にいつも来てくれるそんな君が好きなんです
さっきまで寒かったのに君が来てくれただけで心も体も温まってる気がするよ
あたたかくて優しい気持ちなの
この恋心を伝えれた時にこの時の思いを沢山君に話すね
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