今年最後のふたりぼっち ページ8
written:河原美羽奈
男主です。夢主の名前は最初から最後まで出てきません。
恋愛要素は一切ありません。苦手な方は飛ばすことを推奨します。
｢年越しそば、できたぞー｣
｢流石、料理上手は得だよな。いっただっきまーす｣
彼女いない歴16年、×2。男二人だけの、少し寂しい大晦日。
｢そばなんて、普通に食べててもあんまり美味しさ感じないのにな｣
｢祭りのかき氷とか、焼き鳥もそんなもんじゃん。受験のときに、親が気を利かせて買ってきてくれた焼き鳥の味気なさよ。みんなであの騒がしさの中食うから旨いんだって｣
｢そっかー。じゃあこれが旨いのも、お前と食ってるから？｣
｢いきなりキザったらしいこと言うんじゃねえよ、全く。｣
大晦日定番のギャグ番組と歌番組を、リモコンをぽちぽちといじりながらかわりばんこに観る。
芸人が渾身のネタを披露して。
｢ひゃははは、なんだこいつ！ おもしれー｣
｢お前もタイキックだからな！ マジでうるせー｣
そのありきたりにも思えるギャグには全く笑えなかったけど、目の前で腹抱えて笑ってるのがいると、なんとなく伝染してくる。一緒になって、テレビそっちのけで笑ってた。
笑いを鎮めたくて、歌番組にチャンネルを変えたら、ちょうどアイドルグループがお得意のダンスを踊っているところだった。
｢わー、超かわいー。俺もこんな彼女欲しいなー、そしたらこんな笑いのツボおかしい暑っ苦しい男と年越すこともねえのにな｣
｢どうせお前は胸しか見てねえだろ！ 俺としてはもうちょい歌うまい娘のほうが好きだな、この娘可愛いけど。めちゃくちゃ可愛い｣
好みは違っても、最終的にはなぜか同じところに着地する。
チャンネルは変わっても、この居心地の良い雰囲気は変わらない。そばがのびるのも気にせずに、狭い炬燵の二辺を互いに陣取って、ひたすらだらだらと過ごす。
新しい生活に勉強に、って毎日目まぐるしく過ぎていった一年の締めくくりとしては、随分カッコ悪いものではあるけど。
｢よし、そばおかわり。茹でてきていいか？｣
｢あーもう、お前がやったら絶対ふきこぼれるだろ！ 俺がやるから休んでろって！｣
｢やりい！ んじゃ、よろしくなー｣
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