5話 ページ6
「危ないッ！」
声のする場所へと来てみれば、今まさに柵から落ちようとする二つの影があった。
それはまるで相手を自分ごと落とそうとしている様な態勢で。
何だか既視感を覚えるその二人の男達は、火の燃え広がる屋敷にて熾烈な戦いを繰り広げている様子だった。
「このままだと二人が……！」
落ちていく二人に、オレは柵を乗り上げる勢いでその先を見ては思考を巡らす。
黒髪の男の人と金髪の男の人。
下の階は既に火の海であり、このまま放っておけば二人は間違いなく火に巻かれてしまう。
しかしながら二人は完全に敵対関係にあり、助けたとしても戦いは続くのだろうと察する。
「___でも見殺しになんか出来ないっ！」
しかしまあ、結局の所考えるよりも身体が先に動いて。
オレも柵を乗り越え真っ逆さまに飛び降りれば、ポケットからあるチャームを取り出した。
そしてそれを胸に掲げ、祈る様に一つの姿を思い出す。
あの人なら、きっと二人を助けられる。
「ジーニー！」
「ハイハーイ！ ジーニーちゃんの参上よ！
今日はどう言ったご用件で？」
チャームが光り輝き、間も無く現れたのは陽気で明るい、ランプの魔人と呼ばれるジーニーだ。
落ちていくオレに合わせて下って用件を聞いてくるジーニーに、オレは告げる。
「あの二人を助けて！」
オレが視線を向ける事でようやく気が付いたのだろう。
落下の最中にも死闘を繰り広げている二人にジーニーは「あらま」と声を洩らした。
「二人を引き離しちゃっていいかい？」
「多分ダイジョーブ！ 死んじゃうよりは良いし！」
オレの言葉に「仰せのままに」と執事の様にお辞儀をしたジーニーは、忽ち姿を消す。
「URYッ！？」
「うわぁっ！！」
そうして下から聞こえてきた、驚愕にも似た叫び声にて、何だか安心した様な気持ちで地面に着地した。
「……って熱っ！ あちち！
ジーニー！ 金髪の人は！？」
燃え広がる炎が身体に触れ思わず跳ねながらもそちらを見れば、ジーニーが抱えているのは黒髪の人だけで。
金髪の人の姿はなぜか消えていて、見回してもどこにもいなかった。
もしかして引き離すってそういう事？
そんな風に勝手に自己完結していれば、見透かしたかの様にジーニーは頷いた。
どうやら金髪の人はどこかに飛ばされたらしい。うん、まあこれで良かったのかもなー。
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作者名：レフト | 作成日時：2019年9月16日 20時
