1話 ページ2
「おっ！ 止まった！」
暫く追いかけ続けていれば、不意にハートレスは立ち止まる。
「……っていうか暑っつ！
何だココ！ 何でオレ砂漠なんかにいるんだ！？」
気が付けばそこは、アラジン達のいるアグラバーとも引けを取らない様な灼熱の砂漠地帯であった。
周りには砂に埋もれかけた遺跡が顔を出していて。
オレは確かに赤いレンガが地面に張り巡らされている夜の街に降りたはずなのに、なぜだか真昼の砂漠に突っ立っていた。
「もー！ 取り敢えず追いついたぞ！」
一瞬の間に思考を巡らそうとも、流石に原因は分からない。
それよりも目の前のハートレスをどうにかしようと、もう手の届きそうな位置にまで達した時だった。
「___ッ！？」
そいつはくるりとこちらに振り向いたかと思えば、オレに何かを飛ばしてくる。
避けようにもこの近距離だと、反射神経も追いつきようが無かった。
「い"っ！ あぁっ！！」
ざくり。
それは、オレの胸辺りを貫通したのか、と思える程に深く刺し込んでくる。
その途端、尋常では無いシャレにならない痛みがオレを襲い、悲鳴を上げては膝頭を地につけた。
「な、んだこれ……！ なんで、穴だけ空いて……！？」
しかしながら、オレを刺した___黄金色の矢が砂の中に落ちるも、血が一緒に流れ落ちてくる事は無い。
恐る恐る胸に手を当てれば、其処は風穴が空いた様に窪んでいて……何かとんでもない事態が起きている事はオレでもよく判った。
あまりの痛みに意識が薄れてくる。
倒れ伏したその先にいるハートレスは、唯々こちらを見据えているだけだった。
「___だ……ぶ……まも、る___」
音が聞こえる。そして、誰かの声が聞こえてくる。
「……大丈夫だよ。
オレが___オレがキミ達を守るから。
これは贖罪だ。
あの人達に対しての……そして、オレの所為で生まれて苦しんでいるキミ達への、ね」
真っ暗な世界で、微かに聞こえたその声は……何だか心がぎゅっと締め付けられる。
懐かしくて、悲しい。
今自身が大変な事になっているのにも関わらず、そんな感情が湧いてきて、拳を強く握りたい気分だ。
ここはどこだろう？
瞼を少し開ければ其処は相変わらず真っ暗な世界で。
でも、目の前だけはやけに明るくて、ちらりと白色のマントが靡くその姿が垣間見えた。
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作者名：レフト | 作成日時：2019年9月16日 20時
