44話 ページ50
人は誰でも、心の内に秘密を抱えている。
他人という名の世界と交わりながら、自己と他者との境界線を引くための、一種の防御壁だ。
────だからこそ、人は好意を寄せる相手ほど秘密を知りたくなる。
そうして心と心が混じり合うことで、自分という人間を相手に受け入れてもらえたような気持ちになれるからである。
体の繋がりも最後は、全て心の距離へと通じていく。心を持った生き物とはそういうものだ。
「口にしなかっただけで、二人の前で使ったことはあるんだよ。ユニーク魔法」
「そうなのですか？それは知りませんでした」
「実際に経験すれば分かるかな。フロイド、このケーキ試しに食べてみて」
まだ僅かに量が残っていたケーキの端をフォークで切り分けて、フロイドの口元へと運ぶ。
意図がよく分からないとでも言いたげに首を傾げながら、目の前に差し出されたそれを躊躇なく口に入れたフロイドだったが、瞬く間にその端正な顔をくしゃりと歪めた。
「げぇ、何これ。味がしねぇんだけど」
「味がしない……とは、どういうことですか？」
「それが僕のユニーク魔法だよ」
その言葉に、二人の視線が一気に集まった。
話の核心に触れたことを理解して、自ずと期待が膨らんだようである。
きらきらと────寧ろギラギラと、美味しい獲物を見つけた獣のような、捕食者の顔をしている。
「僕の魔法、”
「────もしや、一度僕達の前で使ったことがあるというのは」
「そう。今となっては懐かしい思い出話だよね、三人で鮫に追いかけられた日のこと」
怪我をしたあの日のフロイドを、身を投げ出すようにして庇った当時の僕。
実はもう、あの時には僕のユニーク魔法は完成していて、それ故に勝算があっての行動だったということを、二人は今の今まで知らずに生きてきた。
その種明かしが今、この場でされたのである。
────────────────
ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます。
これからも楽しんでもらえるような作品作りを頑張りますので、よろしくお願いします。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 434人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
藤川秋(プロフ) - ララーサさん» ララーサさん、はじめまして。ご指摘ありがとうございます！確認したところ、確かにフロイドの方が正解でした。完全に見逃してたのでありがたいです。感想もありがとうございます、とても励みになります！ (2020年11月23日 21時) (
レス) id: 93e3af9b0c (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - ↓の9話です！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - 僕の勘違いだったやごめんなさい。主人公とジェイドくんのやり取りで、「僕とジェイドが?」という所「僕とフロイドが？」だと思います。間違っていたらごめんなさい！あと、この物語とても面白いです！頑張ってください！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
藤川秋(プロフ) - イルカの生姜焼きさん» イルカの生姜焼きさん、初めまして。主人公は基本的に、いい子ではなく、少し人間味の欠けた人物に敢えてしようと思っていましたので、そう言っていただけるととても嬉しいです！素敵なコメントと応援をありがとうございます。 (2020年6月14日 14時) (レス) id: d1eae4f705 (このIDを非表示/違反報告)
イルカの生姜焼き(プロフ) - 18話の一番最後で主人公の"興味がないことだ"に対して凄いヴィランぽいっと思いました。上から目線になってしまいすみませんがこれからも頑張って下さい。 (2020年6月14日 11時) (レス) id: ca6db90150 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：藤川秋 | 作成日時：2020年5月26日 15時
