37話 ページ43
このまま、一日が通り過ぎて欲しいなどと思うのは、一体いつぶりのことだろう。
双子のことは好きだけれど、それはそれとして、僕にもやりたくないことの一つや二つくらいは存在するのだ。
デートという建前が嫌というより、二人がその裏で何を考えているのかが全く想像が付かなくて、恐ろしいのである。
「このまま布団でごろごろしてる内に、あっという間に明日が訪れたりしないかな……」
叶いもしない願いを口にして、尚のこと虚しさが増してしまった。
自然と口から漏れてしまったため息は、音のしない空間に染み渡るように響く。
待ち合わせに遅れることの方がよっぽど恐ろしいと思い直して、布に包まれる温もりを泣く泣く手放しながら、衣装箪笥の方へと足を向けた。
箪笥の中には申し訳程度の私服しか入っておらず、シンプルなシャツにジーンズと、良くも悪くも平凡なものばかりである。
それでも、いつもなら全く気にせず着ることができるのに、今日に限ってはどれも野暮ったく見えてしまった。
(どうにも、二人の言葉に引き摺られてしまうというか……)
あの時は深入りしないようにしたけれど、二人の様子はいつもと違って、やけに真剣で重々しかった。
いつまでも胸の内に居座って、忘れさせてくれないような熱を帯びていた。
まんまとその罠に嵌ってしまった僕は、こうしてずぶずぶと彼らの思惑に溺れている。
どうすればうまく息が吸えるのか、残念ながら今の僕には分からない。
ひとまず、無いものを強請ってもしょうがないと、一番最初に目についた洋服に袖を通した。
いつもと代わり映えしない服装だというのに、妙に新しいような、古めかしいような、不思議な感覚に襲われる。
この調子では、いつまで経っても落ち着かないままだ。
(何を企んでいるかは知らないけど……僕が本当に嫌がることだけはしないでくれるはずだ。だから、大丈夫)
心の中で、同じ言葉を繰り返す。
小さい子供に言って聞かせるかのように、何度も、何度も。
言葉の力は存外強い。
そうして深く深呼吸すれば、先程よりは些か気が楽になった。
ずっと重苦しかった胸の内も、気休め程度ではあるけれど晴れている。
これ以上、ちぐはぐな自分に気付いてしまわないように、おざなりに髪を整えてから鞄を背負った。
出掛けるなら今の内だ。そうしなければ、僕はこの部屋から出ることは叶わなくなる。そんな気がした。
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藤川秋(プロフ) - ララーサさん» ララーサさん、はじめまして。ご指摘ありがとうございます！確認したところ、確かにフロイドの方が正解でした。完全に見逃してたのでありがたいです。感想もありがとうございます、とても励みになります！ (2020年11月23日 21時) (
レス) id: 93e3af9b0c (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - ↓の9話です！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - 僕の勘違いだったやごめんなさい。主人公とジェイドくんのやり取りで、「僕とジェイドが?」という所「僕とフロイドが？」だと思います。間違っていたらごめんなさい！あと、この物語とても面白いです！頑張ってください！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
藤川秋(プロフ) - イルカの生姜焼きさん» イルカの生姜焼きさん、初めまして。主人公は基本的に、いい子ではなく、少し人間味の欠けた人物に敢えてしようと思っていましたので、そう言っていただけるととても嬉しいです！素敵なコメントと応援をありがとうございます。 (2020年6月14日 14時) (レス) id: d1eae4f705 (このIDを非表示/違反報告)
イルカの生姜焼き(プロフ) - 18話の一番最後で主人公の"興味がないことだ"に対して凄いヴィランぽいっと思いました。上から目線になってしまいすみませんがこれからも頑張って下さい。 (2020年6月14日 11時) (レス) id: ca6db90150 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤川秋 | 作成日時：2020年5月26日 15時
