30話 ページ36
ラギーと特別仲が良いわけでもないし、レオナさんはレオナさんで自分の世界に浸っているので、黙々と作業を続ける。
幸い、機嫌の良し悪しは分かりやすい人だったので、空気を読むことには苦労しなかった。
いかにもな様子で睨まれたりしない限りは、このまま掃除を続けて問題はないだろうし、今のところ特に何かを言われたりする気配は無い。
それどころか、割と高価な物もゴロゴロと転がっているはずなのに、僕がそれを触っても気にも止めなかった。
(金持ちの感覚って凄いな……)
恐らくは、この部屋の大抵の備品が、それなりに価値のあるものなのだろうが、彼は明らかにその事を何とも思っていない様子だ。
つまりは、傷付いたり無くなったりしたところで問題ない程度には、替えが利くということになるが、生まれ持った環境でこうも金の回りが違うものかと感心したくなるほどである。
───ただし、その事について羨ましく思ったりするかと言えば、話は別なのだけれど。
「……」
「……あの、何か御要望でも？」
正直僕は、金目の物より、他人の視線の方がよっぽど気になる。
例えば、特に何を言うわけでもなく、僕の後ろ姿をじっと見つめていたレオナさんのこととか。
「別に、何でもねぇよ」
「そうですか。余計な事を聞いたみたいで、すみません」
特に追求するでもなく、軽く頭を下げて掃除を再開した。
彼も彼で、僕が話しかけた後は、視線を何処か別の場所に遣っている。
大方、余所者の僕の事が何となしに気になったのだろう。相手の機嫌を損ねたわけじゃないのならそれでいい。
仮に機嫌を損ねたとしても───少し面倒なことにはなるだろうが、死ななければそれでいい。
僕の意志など、その程度のものだ。
「Aくん、結構手際が良いッスね。この調子なら早めに終われそうかも」
「ありがとう、役に立ててるんなら良かったよ」
「そりゃもう、大助かりッスよ！レオナさん、全然気にしないからアレだけど、高価なアクセサリーとか平気で放ったらかしてるでしょ？他の奴に頼んだ事もあるんスけど、ビビり散らかして全然当てにならなかったんスよねぇ」
「ああ……それは少しばかり、その人に同情したくなるかも」
どちらかと言えば短気であろう彼を目の前にして、価値の読めない備品を掃除しなければならないなど、人によっては中々の拷問だ。
そういった意味では、確かに僕は、彼の役に立てる人物なのだろうと思った。
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藤川秋(プロフ) - ララーサさん» ララーサさん、はじめまして。ご指摘ありがとうございます！確認したところ、確かにフロイドの方が正解でした。完全に見逃してたのでありがたいです。感想もありがとうございます、とても励みになります！ (2020年11月23日 21時) (
レス) id: 93e3af9b0c (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - ↓の9話です！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - 僕の勘違いだったやごめんなさい。主人公とジェイドくんのやり取りで、「僕とジェイドが?」という所「僕とフロイドが？」だと思います。間違っていたらごめんなさい！あと、この物語とても面白いです！頑張ってください！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
藤川秋(プロフ) - イルカの生姜焼きさん» イルカの生姜焼きさん、初めまして。主人公は基本的に、いい子ではなく、少し人間味の欠けた人物に敢えてしようと思っていましたので、そう言っていただけるととても嬉しいです！素敵なコメントと応援をありがとうございます。 (2020年6月14日 14時) (レス) id: d1eae4f705 (このIDを非表示/違反報告)
イルカの生姜焼き(プロフ) - 18話の一番最後で主人公の"興味がないことだ"に対して凄いヴィランぽいっと思いました。上から目線になってしまいすみませんがこれからも頑張って下さい。 (2020年6月14日 11時) (レス) id: ca6db90150 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤川秋 | 作成日時：2020年5月26日 15時
