29話 ページ35
男は、大して興味も無さげにこちらを見ると、心底面倒そうなため息をついて体を起こした。
折角の休日を掃除に費やされるのが気に食わないのか、軽く舌打ちまでする始末だ。
あくまで、作業するのは僕とラギーの二人で、彼自身は特に何をするわけでもないはずなのだが、機嫌はそれなりに悪そうだ。
自分の部屋を好き勝手にされるのが癪に障るのかもしれないし、或いは、自分が休んでいる傍らでちょろちょろと動き回られるのが目障りなのかもしれない。
ともすれば、その両方ということもあり得る。
尤も、掃除をすると言い出した張本人は、そんな彼の様子は全く気にも留めていなかった。
普段から彼の面倒を見続けていることを考えれば、それも納得の態度である。
あまりの怠惰ぶりに留年を重ね、学生でありながら既に二十歳という経歴の持ち主を相手にするには、そのぐらいの気概がなければ務まらないということだろう。
これがアズールなら、確実に契約書を作成してサインさせるレベルだが、ラギーの場合は一体どこに価値を見出しているのか。それは、僕には分からない。
「わざわざ助っ人まで借りてきてんだ。さっさと終わらせろよ、ラギー」
「はいはい、分かってるッスよ。レオナさん、自分で片付けとかしないんだから、たまの掃除くらい大目に見て欲しいッスよねぇ」
「うるせえ。いいからさっさとやれ」
「了解ッスよー。じゃ、Aくん、パパッとやっちゃいますか」
来る途中で、事前に準備していた掃除道具を手にすると、ラギーは慣れた手付きで掃除を始める。
そして、この部屋の主人はと言えば、結局そのままベッドの上でごろごろしているだけだった。
随分と面倒そうに見ていたので、てっきり何処か静かな場所にでも避難するのかと思ったが、僕の予想は外れた。
王子という身分である彼にしてみれば、自分の周りであれこれと世話を焼かれるのは特別珍しいことでもなさそうなので、それもまた納得の態度である。
対する僕は、この部屋の物にどこまで触っていいのかも分からず、相手の顔色を窺いながら作業をしている。
彼のようなタイプはきっと、細かいことで一々質問されるのは嫌いだろうからと、詳しい説明は求めない事にしたからだ。
実際問題、文句を言うこともなくベッドに横たわっていはいるが、話しかけるなというオーラをひしひしと感じる。
いくら怠惰な性格とは言え、かなりの実力者でもある彼を、下手に刺激する気にはなれなかった。
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藤川秋(プロフ) - ララーサさん» ララーサさん、はじめまして。ご指摘ありがとうございます！確認したところ、確かにフロイドの方が正解でした。完全に見逃してたのでありがたいです。感想もありがとうございます、とても励みになります！ (2020年11月23日 21時) (
レス) id: 93e3af9b0c (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - ↓の9話です！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - 僕の勘違いだったやごめんなさい。主人公とジェイドくんのやり取りで、「僕とジェイドが?」という所「僕とフロイドが？」だと思います。間違っていたらごめんなさい！あと、この物語とても面白いです！頑張ってください！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
藤川秋(プロフ) - イルカの生姜焼きさん» イルカの生姜焼きさん、初めまして。主人公は基本的に、いい子ではなく、少し人間味の欠けた人物に敢えてしようと思っていましたので、そう言っていただけるととても嬉しいです！素敵なコメントと応援をありがとうございます。 (2020年6月14日 14時) (レス) id: d1eae4f705 (このIDを非表示/違反報告)
イルカの生姜焼き(プロフ) - 18話の一番最後で主人公の"興味がないことだ"に対して凄いヴィランぽいっと思いました。上から目線になってしまいすみませんがこれからも頑張って下さい。 (2020年6月14日 11時) (レス) id: ca6db90150 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤川秋 | 作成日時：2020年5月26日 15時
