27話 (ジェイド視点) ページ33
ラギーが去った後のAは、何事も無かったかのように食事を続けた。
僕も僕で、動揺している事を気取られたくなくて料理を口に運ぶけれど、味気なくて気持ちが悪い。
「いつの間に、彼と仲良くなったのですか？」
「いや、仲良いってほどでもないんだけど……たまたま世話になったから、一回だけ頼み事を聞いてあげるとは言ったね」
「つまり、貴方が彼に借りを作った、ということですか？」
「うん、そう」
その言葉に、息が詰まる思いがした。
僕の向かい側では、フロイドが青ざめたような、苦虫を噛み潰したような、複雑な顔付きをしている。
────そうしたくなるのも当然だ。
Aが、誰かに借りを作ることなど、今ままで一度も無かったのだから。
どうしても手助けが必要な時は、その場ですぐに対価を払える相手か、無償で助けてくれる相手をわざと選んで接していた。
それだけ、長期に渡って他人とのつながりを作る事を、彼は徹底していて避けていたのだ。
でも、Aは今回、それをしなかった。
それがどれだけ大きな意味を持つか、それが分からない僕達じゃない。
(Aが、何処かに行ってしまうかもしれない)
ふと過ぎった考えに、酷く胸が締め付けられた。
────その手助けをしてしまったかもしれない僕達を、殺してしまいたい気持ちにすらなる程に。
彼の世界が、変わりつつある。
僕達の世界が、壊れつつある。
(アズールの時は、さほど何とも思わなかったんですがね……)
小さい頃と違って、僕達の世界にはアズールも時折混じるようになったけれど、その事に関してはこれと言った不快感は感じなかった。
それが、僕達のアズールに対する評価の所為なのか、彼が混ざったところでAの本質が変わるわけでもないと高を括っていたからなのか。
或いは、アズールが相手なら、Aとこれまで通りにずっと一緒にいられると信じていたからなのか。
実際のところは自分でもよく分からないけれど、そのどれもが心の内にはあったのだろう。
でも、他の相手は違う。
(離したくなどない────絶対に)
きっと、僕達の本当の気持ちなど知る由もない彼が、どこか手の届かないところに行ってしまうなど、死んでもごめんだ。
どんな手を使っても。
────それが例え、人に褒められるような行為でなかったとしても。
僕は、僕達は、彼をここに繋ぎ止めてみせる。
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藤川秋(プロフ) - ララーサさん» ララーサさん、はじめまして。ご指摘ありがとうございます！確認したところ、確かにフロイドの方が正解でした。完全に見逃してたのでありがたいです。感想もありがとうございます、とても励みになります！ (2020年11月23日 21時) (
レス) id: 93e3af9b0c (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - ↓の9話です！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - 僕の勘違いだったやごめんなさい。主人公とジェイドくんのやり取りで、「僕とジェイドが?」という所「僕とフロイドが？」だと思います。間違っていたらごめんなさい！あと、この物語とても面白いです！頑張ってください！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
藤川秋(プロフ) - イルカの生姜焼きさん» イルカの生姜焼きさん、初めまして。主人公は基本的に、いい子ではなく、少し人間味の欠けた人物に敢えてしようと思っていましたので、そう言っていただけるととても嬉しいです！素敵なコメントと応援をありがとうございます。 (2020年6月14日 14時) (レス) id: d1eae4f705 (このIDを非表示/違反報告)
イルカの生姜焼き(プロフ) - 18話の一番最後で主人公の"興味がないことだ"に対して凄いヴィランぽいっと思いました。上から目線になってしまいすみませんがこれからも頑張って下さい。 (2020年6月14日 11時) (レス) id: ca6db90150 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤川秋 | 作成日時：2020年5月26日 15時
