幕間：休日トラブル！４ ページ31
「むしゃくしゃしてやった」
────とは、今回の犯人が不貞腐れた顔で発した、言い訳にもならぬ戯言である。
つまりは、フロイドが開口一番に放った言葉がそれだった。
しかも、両手両足をおっ広げて、力なくぶら下げて、空を仰ぐような姿勢でベンチに腰掛けながら。
そこに、申し訳ないという気持ちは微塵も感じられないが、僕も僕で大して期待はしていなかったというのが正直な気持ちだ。
「とりあえず、眼鏡を壊したことに対しては謝ろう。不貞腐れるのはそれからだよ」
「え〜、ダルいからやだ」
「じゃあ、謝らなくていいから僕にアイス奢って。フロイドのこと探し回ってたら疲れた」
「いいよぉ〜、何食いてぇの？」
(それはいいのか……)
あれだけだらだらしていたのに、急に元気になったかと思うと、勢いよく手を引っ張られた。
そしてそのまま、フロイドは全速力で駆け抜けていく。
半分ほどは冗談だったので、彼のスピードになかなか体が追いつかない。
────だけど、追いつけないだけならまだ良かったのかもしれない。
「遅ぇよ、A〜！……あ、いいこと思い付いたぁ！」
そう言うと、男は急に止まった。
勿論、僕はそれに反応できない。
そして、そのままフロイドを追い越しかけたところを────ひょいと、抱き抱えられた。
「はあっ！？」
「アハッ、これ結構楽しいかも〜！」
横抱きだ。
────違う。正確には、お姫様抱っこだ。
「ちょっと！フロイド！さすがにこれは無い……！！」
「え〜、なんで？高いの嫌い？」
「そういうことじゃなくて！！」
どうして、恋人でもない僕が、同性相手にこのような形で抱き抱えられているのか。
怪我をしているわけでもないのに、いくらなんでも気恥ずかしすぎる。
「A、顔赤い？」
「赤くもなるだろ……。似合わなさすぎて辛い」
「そう？可愛いと思うけど」
「────は？」
思考が停止した。
言葉より、何より、それを真面目な顔で言い切ることが、あまりに深く僕の心にのし掛かりすぎて。
どこか優しげなその眼差しに、気付かなければ良かったと不意に思ってしまう程だった。
「だから、もう暫くこのままね！」
「それは勘弁してくれ！！」
だから、見ない振りをした。
その真意が果たしてどこにあるのか、それを聞くための勇気は、今の僕には無い。
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藤川秋(プロフ) - ララーサさん» ララーサさん、はじめまして。ご指摘ありがとうございます！確認したところ、確かにフロイドの方が正解でした。完全に見逃してたのでありがたいです。感想もありがとうございます、とても励みになります！ (2020年11月23日 21時) (
レス) id: 93e3af9b0c (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - ↓の9話です！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - 僕の勘違いだったやごめんなさい。主人公とジェイドくんのやり取りで、「僕とジェイドが?」という所「僕とフロイドが？」だと思います。間違っていたらごめんなさい！あと、この物語とても面白いです！頑張ってください！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
藤川秋(プロフ) - イルカの生姜焼きさん» イルカの生姜焼きさん、初めまして。主人公は基本的に、いい子ではなく、少し人間味の欠けた人物に敢えてしようと思っていましたので、そう言っていただけるととても嬉しいです！素敵なコメントと応援をありがとうございます。 (2020年6月14日 14時) (レス) id: d1eae4f705 (このIDを非表示/違反報告)
イルカの生姜焼き(プロフ) - 18話の一番最後で主人公の"興味がないことだ"に対して凄いヴィランぽいっと思いました。上から目線になってしまいすみませんがこれからも頑張って下さい。 (2020年6月14日 11時) (レス) id: ca6db90150 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤川秋 | 作成日時：2020年5月26日 15時
