10話 ページ12
「ねえ、前から思ってたんだけど……アズールって、監督生ちゃんのこと好きなの?」
「はぁっ!?」
閉店後のモストロ・ラウンジで、ようやく今日の作業が終わろうかという頃に、僕は気になっていた事を尋ねてみた。
双子と一緒にいることにすっかり慣れてしまった僕は、ラウンジで食事を取る機会も以前に比べて増えてきている。
閉店作業を手伝えば料金も割り引いてもらえるので、プレイベート半分、仕事半分といったところだ。
「な、何を言ってるんですか貴方は……!」
「違うの?その割には、妙にそわそわしてるけど」
「確かに、彼女と一緒にいる時のアズールは、いつもより機嫌が良いですからねぇ」
「ジェイド、貴方まで……!」
裏切るかのように話に乗り出すジェイドを、アズールはきつく睨み付ける。
だが、顔はほんのり赤らんでいて、その様子には説得力が無い。
「茹で蛸じゃん」
「ぎゃはは、確かに!アズール、食べられちゃうねぇ〜!」
「お前達、それ以上言うと張り倒しますよ!」
お構い無しに笑い続けるフロイドの姿に、アズールの顔はますます赤くなる。
これ以上からかえば、本気で怒られそうだ。
「折角切れる頭があるんだから、気になるなら上手くデートにでも誘えばいいのに」
「煩い……それができたら苦労しないんだよ……」
軽く指摘すると、アズールは途端に勢いを無くし、ぶつぶつと文句を言い出した。
彼が普段隠している素の部分が顔を見せたようである。
結局のところ、彼の本質は奥手でネガティブ。コンプレックスの塊であるが故に、肝心な所で自信が持てない。
勉学において身に付けた実績という名の自信は、経験のない恋愛ごとにおいては適用されないようだ。
「恋は理屈じゃないから、理詰めなアズールには難しいのかもね」
「貴方が恋を語りますか。まともに恋愛をしたことなど無い癖に」
「確かに、僕自身がのめり込んだ事はないけど。拗れてない分、アズールよりはましだと思うよ?」
「どの口が言ってるんですか……言っておきますが、貴方も大概ですからね」
その言葉には、ジェイドとフロイドも首を縦に振った。しかも勢いよく。
呆れたように言うアズールは、先程と違って落ち着き払っている。
「え……そんなに?」
彼らの顔は、揃いも揃って真顔だった。
もはや言葉を口にすることすらしない。
その冷たい視線だけが、物事を雄弁に語っていた。
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藤川秋(プロフ) - ララーサさん» ララーサさん、はじめまして。ご指摘ありがとうございます!確認したところ、確かにフロイドの方が正解でした。完全に見逃してたのでありがたいです。感想もありがとうございます、とても励みになります! (2020年11月23日 21時) (レス) id: 93e3af9b0c (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - ↓の9話です! (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - 僕の勘違いだったやごめんなさい。主人公とジェイドくんのやり取りで、「僕とジェイドが?」という所「僕とフロイドが?」だと思います。間違っていたらごめんなさい!あと、この物語とても面白いです!頑張ってください! (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
藤川秋(プロフ) - イルカの生姜焼きさん» イルカの生姜焼きさん、初めまして。主人公は基本的に、いい子ではなく、少し人間味の欠けた人物に敢えてしようと思っていましたので、そう言っていただけるととても嬉しいです!素敵なコメントと応援をありがとうございます。 (2020年6月14日 14時) (レス) id: d1eae4f705 (このIDを非表示/違反報告)
イルカの生姜焼き(プロフ) - 18話の一番最後で主人公の"興味がないことだ"に対して凄いヴィランぽいっと思いました。上から目線になってしまいすみませんがこれからも頑張って下さい。 (2020年6月14日 11時) (レス) id: ca6db90150 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤川秋 | 作成日時:2020年5月26日 15時