お嬢様と天才α【糸師冴】 (ページ47)

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『……最初は、冴くんの夢が叶いますように。ってお願いしようと思ってた。

でもそれは祈れば叶うことじゃない。

努力し続ければ必ず報われるわけでもない。

冴くん自身の実力で勝ち取るものだから、祈るのはちょっと違うかなって思うと何もお願いできなかった。』

冴「いまはお願いすること決まったのか？」

『決まってない。…それでも祈りたい気分なの。』

Aの色白い肌に相まって目の周りが赤くなっているのを見つめながら、彼女の手を引いて拝殿横の段差のある石畳に座った。

繋いだ手をAは嬉しそうに見つめながら話した。

『冴くんって指切りの仕方は分からないのに
手は繋いでくれるよね。』

冴「お嬢様は危なっかしいからな。」

エメラルドグリーンの瞳が薄く笑うとAはその視線をじっと見つめた。

『私と喋る時は目を見て話してくれる。』

『喋る時は少し身体を近づけてくれる。』

『考え方フラットなのに伝え方下手なところとか
可愛いなって思う。

そんなたくさんの冴くんをみて

私はあなたを好きになったんだよ。』

幸せそうに頬を赤らめるAの髪を撫でると、
冴は少し考えてから話し始めた。

冴「最初は、…Aと凛が仲良くしてくれれば良いと思ってた。あいつはAに惚れてたしな。

そうすれば俺もスペインでサッカーに集中出来ると思ってた。」

『弟の恋路を摘み取るのは嫌だった？』

冴「相手が凛でもお前だけは譲りたくなかった。」

引き寄せられるように唇を奪われると、
じんわりと枯れきった心を満たしてくれる。

『神様に見られる。』

「見たこと無いから問題ねぇ。」

そう言って再びキスを落す冴に目を閉じて、彼の感触を忘れないようにと熱に身を任せた。

春に恋に落ちて、

夏に浮かれて、

秋にまたあなたを好きになって、

冬にはきっと今日のことを後悔する。

このエメラルドグリーンの瞳を見つめるのも今日で最後。

そう思うと行き場の無い気持ちが苛立たしくも愛しく思えた。

毎回キスをした後に抱きしめてくれる冴くん。

これも今日で最後かな。

そう胸に刻むと、
Aは喉を震わせながら話した。

『私、結婚する事になったの。』

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