お嬢様と天才α【糸師冴】 (ページ30)

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蝉の鳴き声がじわじわと初夏の訪れを知らせる。

Aは透明なチョーカーを付けて髪はセンター分けでゆるく巻き巻きし髪はポニーテールを作る。

冴の髪色にラメを散りばめたピンクベースのジェルネイルを爪先にグラデーションを施して。

夏仕様にアプデして、インターホンの音を聞きながら大きな鏡の前で最終チェック。

今日も朝から冴と凛に当たり前のように
『おはよう』と声を掛ける。

少し前の私からは想像出来ない浮かれた夏がやってくる。

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コンビニに張り出された夏祭りのポスターをじっと見つめるAに冴がソーダ味のアイスをパキッと割って差し出す。

冴「行く？」

ちょっと待ってね、と言うとアイスを食べながら携帯でスケジュールを一緒に確認する。

『ヒート終わってたらいけるかも。』

冴「日程ギリ被ってるな。』

『冴くんが試合でハットトリック決めたら行けるかも？』

冴「じゃあ決まりな。」

冴が薄く笑みを浮かべると私も釣られて笑う。彼のそんな笑い方をするようになったのはいつからだろう。

彼と話すことに緊張しなくなったのはいつからだろう。

じっとエメラルドグリーンの瞳を見つめれば、冴の手が耳を撫ぜてキスをしてくれる。

2人で歩いてる時は手を繋いでくれる。

ずっとこんな毎日が続くんだと本当に信じていた。

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