仮面の中は ページ8
すごい。
純粋にそう思った。
いつも地道に私を傷つけてきた人達は美風君の一言で、逃げ出してしまった。
言葉一つで、ここまでできるなんて。
美風君は何事もなかったかのように振る舞っているけど、不意に目があったような気がした。
その視線が彼からもらったメモに向いていることを悟って、すかさず開く。
「……」
内容は、単純だった。
一行のみの短文。美風君らしい。
どういうつもりかは分からないけど、何かありそうだ。
私は生唾を飲み込んで、メモをポケットにしまった。
すると美風君も満足そうに一瞬微笑んで、授業開始を待つ。
一戦、ありそうです。
**
そして時間は過ぎ、放課後。
美風君から貰ったメモの通り、私は学校近くの公園に足を向けていた。
夕日の斜光を浴びながら、ベンチに座り込んで彼を待つ。
メモの内容は「放課後、公園に来て」の一文。
ここらで公園といえばここしかないので、特に迷うことはない。
時間はまだ五時過ぎだし、門限もたいして決まってないから自由だ。
なんだろう、そう思いながらも待っていると、入り口放免から人影が見えた。
「……おまたせ」
スクールバックを片手に、歩いてくる美風君。
その姿は息を飲むほど美しく、優雅。
伏せた瞼がゆっくりと持ち上がって、髪と同じ色のマリンブルーの瞳が私を捉える。
けれど一つ、違和感を感じた。
ただならぬ違和感。
それはきっと。
「ちゃんと来たみたいだね、褒めてあげる」
学校であった時とは違う、冷血な雰囲気。
冷たく、無機質で、色褪せたような視線に私は小さく狼狽えた。
クリアボイスは聞き覚えのある美風藍の声。
その容姿も、雰囲気も、声も、全部。
――正真正銘の美風藍だ。
疑っていたわけじゃないけど、確かな確信があった。
「でも、サイアク」
綺麗で長い指が私の顎をすくう。
厳しい言葉も、その眼差しも、何故かすんなり胸の中にすとんと落ちてくる。
「髪も痛んでるし、肌だって荒れてる。キミ、女の子ならもうちょっとしっかりしたら?」
これが美風藍。
外面だけは完璧。事務所内では毒舌キャラ。
私は目を丸くした。
98人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
有栖(プロフ) - 更新、頑張って下さい!! (2016年3月13日 10時) (レス) id: d04813d339 (このIDを非表示/違反報告)
稲葉ふゆき(プロフ) - 遅れてすみません。コメントありがとうございます!これからもこの作品をよろしくお願いします (2016年1月9日 23時) (レス) id: 3715ce0b63 (このIDを非表示/違反報告)
美風りつか - とても面白いですね!これからも頑張ってください!楽しみにしています(*^^*) (2015年9月3日 1時) (レス) id: 1f55841bfd (このIDを非表示/違反報告)
水島リツ(プロフ) - 久しぶりに来てみたら少し更新されてて、飛び上がって喜びました笑。これからも頑張ってください!陰ながら応援してます! (2015年7月20日 1時) (レス) id: 1b884eaa7e (このIDを非表示/違反報告)
稲葉ふゆき(プロフ) - みーちゃんさん» ありがとうございます!なんというか、書きやすいんですよね(笑) 最近更新低下していてすみません……。以後、気を付けます。 (2015年7月17日 15時) (レス) id: b109ce92e2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:稲葉ふゆき | 作成日時:2015年4月3日 1時