一羽 ページ2
わたしのお父様はとても厳しいのです。
「A、まぁたお前は外に出て走り回ってきたのか」
「いいじゃあないですか！他の子だって、そうしてます！」
「はぁ…お前ももう12歳だ。商業についての勉強もしておくように！鬱くんは14歳にも関わらず、勉強熱心なんだぞ？お前も少しは見習わんか」
そればっかり！お父様のアホ！
…でも実際、鬱兄ちゃんはすごい。わたしと2つしか変わらないのに。
お父様もお母様もわたしも、鬱兄ちゃんが大好きだ。
「ただいま戻りました。」
「おぉ、おかえり鬱くん。今日もしっかり勉学に励んでいるな。」
「ありがとうございます。」
鬱兄ちゃんはわたしを見ると、にこっと笑う。綺麗な紺色の髪がよく似合う兄ちゃんはとてもかっこいい。
「Aも、少しは勉学に励むように。」
「Aお嬢様も、頑張られていますよ。」
「鬱くんは優しい男だな。さて、そろそろ飯にしよう。ほら、Aも部屋に戻り、着替えてきなさい。」
お父様が部屋から出ていったのを見計らって、私は兄ちゃんに抱きついた。
「兄ちゃんおかえり！」
「ふふ、ただいま。A」
兄ちゃんは私の頭を撫でてくれる。優しい手。
「兄ちゃん！今日はなにして遊ぶ？」
「そうだなぁ。なら、今日は学校で習った遊びを一緒にしようか。」
「わぁ！楽しみ！」
そんな会話をしていると、ご飯ですよ！と声が聞こえる。
じゃあ、後でね。と、兄ちゃんとお別れして、お部屋に戻り、お着替えをする。
わたしは、どんな遊びをするのかと、ずーっとわくわくしていた。
ーーー
お風呂上がり、兄ちゃんのお部屋に行くと、笑顔で出迎えられる。そして、はい。と、色紙が渡された。
「兄ちゃんこれは？」
「折り紙だよ。知っとるやろ？」
折り紙。確かに知ってる。昔お父様から貰ったけど全然出来なくて、諦めた遊びだ。
「わたし、できるかな…」
「大丈夫。一緒に頑張ろうね」
兄ちゃんはわたしに、折り方を教えてくれた。
えぇと、三角に折って、また三角に折って開いて、
それでここを開いて、押さえて……
「できた！」
「わぁ…鶴だわ！」
兄ちゃんの綺麗な鶴と、わたしの少し歪んだ鶴が並ぶ。
「うーん…うまく折れなかった。」
「たくさん折ればきっと上手になる。鶴はね、色々な想いが込められてるんだよ。例えば、幸せを願う。とか。」
幸せ、かぁ。ならわたしは。
「わたしは、兄ちゃんの幸せをお願いする！」
兄ちゃんが、幸せでありますように。
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作者名：ほたて | 作成日時：2022年8月25日 22時
