さん ページ47
朝日が昇り始めた頃､俺たちはθ国の国境を越えていた｡
なんの偶然か､Δ国国境の近くにθ国の城はあった｡
そして､奇跡的に今､侵入出来ている｡
『聞こえるか』
「ﾄﾝﾄﾝ」
『お前に持たせた高性能爆弾は､ビーズぐらいの大きさで10人程殺せる｡間違っても､自爆はするなよ』
「ﾄﾝﾄﾝ」
『お前が要人のいる部屋､城内全て､そして玉座に仕込み終わって､脱出したら合図しろ｡5秒後に起爆する』
資料室､通信室､幹部室､会議室…重要であろう部屋に爆弾を投げ入れていく｡
早朝の為か､見回りの兵士しか見かけない｡
ある程度城内に仕掛け終わり､あとは玉座だけだ｡
ただ､どうしても外交官を一目見たくて､地下牢へ足を向けた｡
錆び付いた匂い､湿った匂い､そんな匂いが蔓延る地下牢には､気配があった｡
気配を殺し､息を殺し､足音も殺して､俺はそちらに近寄っていく｡
『ーさあ､吐け｡奴らはいつ攻めてくる』
聞き慣れた汚い声､耳障りな､気持ち悪い声
『知らないと言っているだろう？彼の王は､時に私ですら予測できない事をやってのける』
それに返すのは､俺に色んな話をしてくれた､耳に心地いい､穏やかながらに敵意を含んだ､外交官の声だった｡
生きて､いた｡
『いい加減に､！？』
『触れるな､消えろ､そして死ね』
鞭を振り下ろそうとした王族の背後に回り､口を抑えて､上を向かせ､その喉元を掻き切った｡
王族は血の泡を吹き､声も出せずに倒れた｡
「…ギ､ギ？」
「…無事で､良かった､外交官」
王族が着ている服の綺麗な部分を破り､外交官の傷を簡易的に処置していく｡
その作業を行いながら､俺は隊長に通信を繋いだ｡
『…隊長､』
『どうした』
『外交官を発見｡保護の為作業を中断しました｡其方に送り届けてから作業を再開します』
処置が終わり､動けないであろう外交官を､負担が少なくなるように担いで走り出す｡
「ギギ､君は…」
「…帰れないかも､しれません」
その言葉だけで彼は察したのか､大人しく運ばれていた｡
周りに注意しながら外に出て､予め待機して貰っていた隊員に外交官を預けた｡
「これより作業に戻ります｡外交官､さよなら」
「…無事､でね」
俺はその言葉に驚きながら､城の中へと走った｡向かうのは､玉座｡
俺を
この城を支える柱に3割､要人がいる部屋に5割､そして残りの爆弾を俺は持っている｡
彼奴を確実に殺す為の､布石だ｡
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作者名：東の番長 | 作成日時：2019年6月3日 7時
