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迎えの馬車が来たようで､ヴィリスと俺を先頭に屋敷の外に出る｡
あの日通ったアーケードに咲く花は変わっていて､香りのする花が咲いていた｡
ただ､葉と葉の隙間から差す木漏れ日は変わっていない｡
「ーヴィリス少将､ギギ」
そこを抜けた先には､中将としての服装に身を包んだガラヴァ中将が立っていた｡
「！…ご家族もご一緒に？」
「あぁ､そ「いや､ここで別れる」ッが？！」
ヴィリスの言葉を遮り､俺はそう言ってヴィリスの鳩尾目掛けて拳を放つ｡
流石に右手だが｡
「なっ､ギギ！！」
「家族との別れを惜しむなんて､普通の事だ｡特別扱いは出来る筈がない｡国民は､そんな事出来ないんだ」
貰った物を､ひとつひとつ､丁寧に､脱いで外して､地面に置いていく｡
代わりに首に引っ掛けたのは､ポケットから出した､くすんだ銀の､裏面に"gigi"と彫られた､ドッグタグ｡
「え､なん､で…？」
「邪魔､その一言だ」
背後に感じた殺気を避けて､ガラヴァ中将の傍に飛び退く｡
殴ろうとしてきたのは､コネシマだった｡
「お前ぇ…！！」
「考えても見ろ｡こんなに多くて､敵にバレたら？動きを制限してしまったら？それこそ､死ぬしかなくなる」
なるべく彼らを見ないように､痛みに顔を歪め､未だ立つことができないヴィリスに視線を向けて､俺は話した｡
「俺は､人形だ｡心も､感情も､記憶も､家族も､命だって要らない｡必要なのは､持ち主だけ」
なら､どうして瞳が揺らいでいる？
「殺す為の､壊す為の道具なんだ｡持ち主がいればいい」
なら､どうして辛そうに笑う？
「俺は､家族じゃない」
否
「人間でもない」
否
「俺は」
だめだ
「殺戮兵器だ」
そんな顔で､嗤わないでくれ
泣きそうな顔で笑わないでくれ
抱き締める事が､頭を撫でる事が
今の僕には出来ないのに
「…ッ､」
あぁ､どうか
僕の愛する人､そしてその愛する人よ
その言葉だけは､言わないでくれ
その子が､壊れてしまうから
帰って､来れなくなるから
「早く､死んじまえ！！」
「もう二度と､俺らの前に現れんなや」
パキン
透き通った､無色のガラス玉が
誰もいない家の中の､誰もいない部屋の中で
粉々に砕け散った
その周りには､色鮮やかで､各方面から光を反射する硝子玉
それらは､欠片でさえ､窓から差し込む太陽の光によって
キラキラと
美しく
哀しく
輝いていた
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作者名：東の番長 | 作成日時：2019年6月3日 7時
