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ゾムは顔をくしゃりと歪ませて､泣きそうなのを我慢しているように見えた｡
鮮緑の瞳には､水の膜が張っていた｡
「っ…やって､ギギ､俺らより下なんよ？！なんでっ､なんで､ギギが戦わな､あかんの…！？」
「…」
「こっち来て､俺らの家族んなって､幸せやったんや､ないんか…？！」
ぽろ､と涙が零れる｡
しあわせ､幸せか｡
そうだ､確かに幸せだった｡
「…ゾム､」
「う"ぅ…いややっ…ぐすっ､いかんでぇや…」
泣き始めてしまったゾムの横に行き､ゾムを片腕で抱き締める｡
あったかかった｡
「ここに来て､初めての事ばかりで､ようやく､しあわせってなんなのか分かった」
「ぐすっ…」
「おれのしわあせってね､皆なの｡皆がいてくれる事､生きている事」
皆の視線が俺に集まるのが分かった｡
ヴィリスに保護されて､約3ヶ月ほどだろうか｡
俺は色んなものを与えてもらった｡
「だから､俺はそれを守りたい」
「殺す為の､壊す為のこの力を､守る為に使う」
「それって､だめなこと？」
そう聞くと､ゾムはブンブンと首を横に振る｡
「せやけどっ､そんなん､ギギが…！」
「…確かに､そうなるかもしれない」
「ならっ！」
「でも､嫌だ」
シャオロンが琥珀の瞳に涙をためて俺を止めてくれる｡
でも､俺は…
「皆が､ヴィリスが､軍の人達が犠牲になるくらいなら､先の無い俺が､犠牲になった方がいい」
「それに､あの人達に託されたこの願いを､俺は果たさなきゃならない」
そう言って､ゾムを離してヴィリスを見る｡
ヴィリスは…ヴィリスも､泣きそうになっていて､少し､顔が緩んだ｡
「だめ､かな」
「…軍部に､掛け合ってみる」
その言葉に､皆が反論する｡
ファニーも､アルバートも､クルトも｡
皆必死になって､止めていた｡
「…私は､認めないぞ､ギギ」
「いいよ｡許さなくていいし､認めなくていい｡でも､俺にはもう…」
皆といる時間も､残されていない｡
その言葉を飲み込んで､俺はヴィリスに歪に笑いかけた｡
ヴィリスは､とうとう涙を溢れさせて､俺を何も言わずに抱き締めてくれた｡
俺も､応えるように片腕で縋り付く｡
すると､皆も抱き着いてくれた｡
あったかい
そう感じながら､俺はガラヴァ中将に問いかけた時の事を思い出していた｡
『ー俺は､あとどれ位生きられる』
『…知っていたのですか』
『何となく』
ヴィリスが迎えに来る日に､俺は彼にそう問いかけていた｡
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作者名：東の番長 | 作成日時：2019年6月3日 7時
