"しあわせ"と"おねがい" ページ36
ふと､目を覚ますと俺は誰かの腕の中にいた｡
あぁ､そうだ｡
帰ってきて､皆に心配されて､軍曹に抱き締められたまま寝たんだ｡
「…」
軍曹が起きないように､身を寄せる｡
耳を軍曹の胸に当てると､とく､とく､と鼓動が聞こえてきた｡
誰だったか､歴代の隊長の誰かだったか、他人の心臓の音はとても安心すると言っていた｡
「(確かに､安心する)」
俺は再び瞼を閉じて､眠りに入った｡
もう少し､寝ていたかったから｡
呑気にそんな事を考えていた俺は､空いた手で顔を覆い､震える軍曹がいたなんて知ることがなかった｡
わいわいと賑やかな声に意識が浮上する｡
どうやら俺は誰かに抱かれているようで､自分ではない鼓動が聞こえてくる｡
「…､」
「あ､おはようギギ」
俺を抱いていたのは､ひとらんらんだった｡
皆のように訛り？が無い彼は､東の方の生まれらしい｡
軍曹も訛りがないけど､どこの生まれなんだろ｡
「よく眠れた？」
「ん…」
「ふふ､まだ眠いの？」
ゆっくりと､優しく頭を撫でられる｡
声も優しくて穏やかだから､また眠ってしまいそうだった｡
でも､皆が話してるし､起きようか…
「お､起きたんかギギ」
ひょこっとソファの背凭れから顔を出したのはコネシマだった｡
騒いでる中にいるのかと思っていたが､どうやら後ろで本を読んでいたらしい｡
「体､どこも痛くないか？」
「うん…」
「そうか､良かったわ」
「…コネちゃんに心がある…」
「どういう事やひとらん！！？」
その言い合い？じゃれ合いですら､今の俺には睡眠作用になるようだ｡
また､瞼が閉じそうになっている｡
ぽす､とひとらんらんの肩に頭を預ける｡
それに気付いたのか､ひとらんらんは俺の頭を撫でてくれた｡
そして､多分コネシマが俺の手を握ってくれる｡
コネシマは､多分体温が高いんだろうな｡
手から温もりが伝わって､じんわりと身体に染み渡っていく｡
遠くに聞こえるーーーの声を子守唄に､俺の意識は深く深く沈んでいく｡
そこに恐怖はなく､穏やかな落ち着いた気持ち｡
冷たさも､心細さもない｡
あるのは温もりと､安心感｡
孤独では無いと､嫌でもその温もりが教えてくれる｡
これが､きっと"しあわせ"｡
だから､"おねがい"
俺を
いつか
ころして､ください
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作者名：東の番長 | 作成日時：2019年6月3日 7時
