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俺は今､とてつもなく､今までに無いくらい､人に会いたくない｡
だから､抵抗する｡
「…ギギ､ちゃんと歩きなさい」
「ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ」
「ほら､我儘いわない」
「ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ」
「(…帰りたくないシバイヌ…)」
両手をヴィリスに掴まれ､グイグイと引っ張られるが､俺はしゃがみ込み進まないようにしている｡
いやだ､会いたくない｡
「…」
「…はぁ」
「…？！」
ぐんッ､と強く引かれ､抵抗虚しくヴィリスに抱かれる｡
急に視界が高くなり､思わず固まった｡
「ギギ､お前は会いたくないかもしれないがな､皆､会いたくて仕方ないんだ」
「…」
「もしこれが嘘だったら､彼奴らは家に入ってもお前を見ない」
「…」
「でもな､そんな事は絶対無いんだ」
ぽつぽつ､と呟くように言ってくるヴィリスの目から､俺は顔を逸らし彼女の肩に顔を置いた｡
この感情の名前は分からない｡
けど､今は､誰にも会いたくない｡
そう思った｡
けど､ヴィリスは関係無さそうに扉へと歩いていく｡
耳に届いた微かな声に､俺は肩がピクリと跳ねる｡
「…皆！帰ったぞ！」
「…」
その声を聞いて､俺はヴィリスの肩に顔を埋める｡
そして､聞こえてくる彼らの声｡
名前も呼ばれた｡
何か声をかけられた｡
それでも､俺は顔を上げることはしなかった｡
「…」
「…(嫌われる恐怖､かな)」
リビングに着いて､弟たちが何を話しかけても､どこかに触れても､ギギは顔を断固として上げようとしなかった｡
まあ､当たり前､なんだろうか｡
家族を､愛を知らなかったギギ｡
それを失うかもしれないと､無意識下で理解しているのだろう｡
「…ギギ」
「…」
「ギギ､大丈夫だから｡顔を上げてごらん」
そう言いながら背中を撫でていると､身体がピクリと反応し､ゆっくりと密着させていた体を離した｡
顔は伏せたままだが｡
「…ギギ､家に帰ってきたらなんて言うんだっけ？」
「…､」
反転した瞳が見上げてくる｡
"それを言っていいのは､自分じゃない"
そう言っているようだった｡
だが､私も諦めないぞ？
「…お前は､私や鬱たちの為に怒ってくれたんだろ？」
「…」
「なら､私はお前を怒る理由が無い｡寧ろ､感謝しなければいけない」
「…？」
困惑した表情で､ギギは顔を上げる｡
前髪を切ってもらったからか､その表情がよく見えた｡
ギギの後ろにいた鬱も､私の意図に気付いたのか､私の隣に来た｡
「有難うギギ､私の為に怒ってくれて」
「ありがとなギギ｡俺らん事守ってくれて」
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作者名：東の番長 | 作成日時：2019年6月3日 7時
