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その日は､客室に案内され泊まることになった｡
ガラヴァ中将の他にも､他の将校やカルブ中将も部屋に訪れた｡
「ギギ､君に良い事を教えてあげよう」
「…？」
「君には帰る場所がある｡それを忘れてはいけないぞ」
カルブ中将はそう言って俺の頭を撫でて､部屋を出ていった｡
俺は暫しぼーっとした後､部屋のシャワーを浴び､夕食を断り､備え付けの寝間着を着てベッドに潜り込んだ｡
ヴィリスの家では､誰かしらの話し声がしていたのに､ここは何も音がしない｡
それが､前の所と似ていて､俺は､少しこわくなった｡
そのまま､俺は一夜を過ごした｡
「…お早よう御座います｡よく寝れなかったのですか？」
「…」
「はぁ…正午前には､ヴィリス少将が迎えに来るようです｡着替えを準備したのでそれを着てください｡それと､これを返しておきます」
手渡されたのは､ここに保護されていた時に来ていた隊服｡
そこまで損傷が無かったのか､前と余り変わらずに返ってきた｡
『…中将､聞きたいことがある』
『なんでしょう？』
『…ー』
「ギギ！」
あの時と同じ馬車から降りて､走ってくるヴィリス｡
俺は､彼女の顔を見る事が出来なかった｡
髪､切らなければ良かった｡
「有難う御座いました､ガラヴァ中将」
「いえ､気にしないで下さい｡それではギギ､また会いましょう」
ガラヴァ中将は一礼して､軍本部へと戻っていた｡
残された俺たちは､その背中を見送った｡
「…さぁ､ギギ｡帰ろう」
「…」
ヴィリスから手を差し出される｡
俺は､その手を少し間を空けてから､取った｡
と､急に引き寄せられバランスを崩す｡
ヴィリスに抱き締められていた｡
「ッ…すまない…！良かった…よかった…！」
「…」
どうして､貴女が謝るのか｡
どうして涙を流す必要があるのか｡
俺には分からなかった｡
馬車の中には気まずい雰囲気が漂っていた｡
ギギはガラヴァ中将から渡されたであろうバックを抱きしめ､そこに顎を置き外を眺めている｡
その姿に､私は見覚えがあった｡
「(拗ねている､いや落ち込んでいるのか)」
何かをやらかした時のハノに､怒られた時の弟たちにそっくりだった｡
別に私は怒ってなどいない｡
怒るなんて､以ての外｡
「(…この子は､分かってないんだろうな)」
そう思うと､可愛くて笑みが溢れる｡
緩む頬を見られないよう､手で顔を覆うが､ギギはピクリ､と体を跳ねさせていた｡
覚悟しろよ､ギギ
私も皆も､可愛がってやる
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作者名：東の番長 | 作成日時：2019年6月3日 7時
